ヒューム

 人類のうち、最も説明を必要としない種族――それはヒュームであろう。彼らはホモ・サピエンスに極めて近く、我々の言葉で言う「人類」そのものである。ヴァナ・ディール中最も人口の多い種族としても有名である。

 ヒュームは際立った特徴を持たない。これは彼らの短所であるが、同時に長所でもある。ヒュームの冒険者は万能で、あらゆるジョブをこなす器用さを持つ。この性質はしばしば「個性のないのが個性」と表現されるが、個体によって触れ幅が大きいのも彼らの特徴である。例えば外見は個人によって大きく違う。平均的なヒュームは中肉か痩せ型だが、ガルカの先天的な体格を除き、人類中で太っている男性を見かけるのはヒュームのみである(これはまた、彼らが肥満に陥るほどの経済的成功を得ていることも意味している)。

肥満型のヒューム男性

◆バストゥーク共和国――確執の歴史

 4カ国のうち、ジュノに続いて若い歴史を持つのがバストゥーク共和国である。近年優れた工業力で注目されているが、もともとはパルブロ鉱山で採取される希少金属ミスリルの精製と加工によって発展した。同国が工業国として地位を築いたのは偶然ではない。グスタベルグは見渡す限りの荒地である。水は鉱毒を含み飲用に適さず、周囲に草木の繁茂も見られない。同地はロンフォール(サンドリア)やサルタバルタ(ウィンダス)のような生産力の高い土地ではなかった。主要構成員である大勢のヒュームと、一握りのガルカたちは、工業力の充実に国家の将来を賭けるしかなかったのだ。

 600年前、獣人アンティカに追われて、クゾッツから大陸に渡ってきたガルカ族の一部が、クォン大陸南部に居を構えた。彼らはもと砂漠の民であり、劣悪な環境に耐えられる生命力と、つるはしを岩盤に突き刺すことが出来る怪力、そして無限の体力を持っていた。伝統的に工業に優れ、黒鉄鉱という質のいい鉄を独自に精製する技術をも体得していた。こうしてバストゥークは、ガルカ族がヒューム族を牽引するかたちでゆっくりと滑り出した。

 転機が訪れたのは約150年前である。10人のヒュームが、金属ミスリルの眠るパルブロ鉱山の開拓に成功したのだ。以後バストゥークはミスリルの輸出で飛躍的に発展した。工業力を手に入れたヒュームは物質文明を探求し、着実に成果を上げた。国政の主権はガルカからヒュームへと移った。この関係は今に至るまで連綿と続く。ヒュームの技術者が生み出した新しい工業技術は、ガルカの伝統工芸を衰退に追い込んだ。現在ヒュームは社会的にガルカの上位にある。ガルカは鉱山区の貧民街に住み、劣悪な環境下での労働を余儀なくされているし、参政権も与えられない。バストゥークのヒュームはガルカを蔑視し、ガルカはヒュームを憎悪している。個人レベルで人種の壁を越える者たちもいるが、両者の確執は深く、輝けるバストゥーク史に暗い影を落としている。

 現在の繁栄を除けば、バストゥークは「技の時代」に最盛期を迎えた。彼らは大砲という強力な火器を用いてサンドリア軍を打ち破り、「力の時代」に終止符を打った。エルヴァーンに代わって大陸の主役となったヒュームは、ヴァナ・ディール全土に散り、世界を重商主義で染めていった。その一つの成果がジュノ大公国である。ジュノは大陸経済の架け橋として、文字通り大陸を繋ぐジュノ大橋の上に建国された。大公カムラナートもまたヒュームであるためか、両国には多くの相似点が見られる。とりわけ第二・第三次産業が経済の中核を担う国家構造は、現代という時代をよく象徴している。

 技の時代の終わり、世界は獣人との一大決戦「クリスタル戦争」に巻き込まれた。バストゥークも大きな犠牲を払った。パルブロ鉱山はクゥダフの襲撃を受けて陥落し、多数の戦死者が出た。人類軍の中核を担ったのはサンドリアのエルヴァーン騎士たちだが、技術力を背景に持つバストゥーク軍の戦功も無視できない。特に「大砲」を個人携帯用に縮小させた兵器「銃」は、獣人たちを大いに苦しめた。獣人軍を撃退するのに人類の結束は欠かせなかったが、「闇の王」に直接とどめを刺したのは、バストゥーク出身のミスリル銃士――ヒュームのフォルカーであった。

ヒュームの冒険者が下船する
ヒューム(老婆)

◆ヒュームの文化

 ヒュームの名前に関しては、男性、女性を問わず、特定の傾向はほとんどみられない。この事実は柔軟だが主体性に乏しい彼らの本質をよく表している。

 そう、ヒュームに問題があるとすれば、おそらくそこだ。ヒュームは平凡で一面的すぎる傾向がある。バストゥークに始まる文化スタイルは画一的で、価値観の違いを容認できず、他種族の文化を経済力で押し流してしまう。これぞヒュームが嫌われる一番の理由である。その証拠にガルカの豊かな精神文明は、今やバストゥーク文化からつまはじきにされ、衰退の一途を辿っている。古参のエルヴァーンやタルタルからも、その歴史の浅さから、彼らを若造あつかいすることが多い。

 食文化も質素なものである。グスタベルグでは降雨量が極端に少なく、地下水の集結する首都周辺以外では、イモ類(ポポトイモ)を除く作物が全く育たない。従って食事は質素である。プレーツェルという塩味のパン、ククル豆を煮たチョコドリンクなどが有名である。ヒュームはまたラテーヌキャベツを好んで食するが、クォン大陸で一般的なブルーピース大羊の肉、乳などは外国から仕入れている。ただし、これらはもはやクォン大陸で一般化しすぎており、ヒューム独自の文化であるとは言いにくい。

 しかしながら、世界を席捲する重商主義が、ヒュームの手によることもまた事実である。逆を言えば、それが平凡と思えるほど、ヒューム文化が浸透しているともいえるのだ。彼らはその数の多さで、ヴァナ・ディールを牽引している。冒険者時代に突入したが、そのうちほぼ半数がヒュームであり、他種族を完全に圧倒している。この状況が続く限り、彼らが時代の主役を明け渡すことはないだろう――そういえば確か、古代人もまた、ヒュームそっくりの容姿だったというではないか?
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