その83

キルトログ、故郷について語り、のちバルクルムでダムセルフライを狩る

 バストゥーク商業区にある競売所は、バザー商人の集う噴水広場の前に位置して、終日大賑わいを見せている。ここでPivoの姿を見かけたので挨拶をした。

 私は白魔道士の修行が終わったことを告げた。既に戦士の格好をしている。これからどうするのですか、と彼が訊くから、国へ戻ってミッションを遂行するつもりだ、と答えた。いいかげんシャクラミを目指さなくてはならない。それに魔術修行を始める前から久しくウィンダスには戻っていなかった。

 流れから故郷の話になった。Pivoはバストゥーク出身で、やはりこの国には思い入れがあると言う。私の場合少々事情が異なる。ウィンダスにはふところ深く私を受け入れてくれた恩がある。一方種族のアイデンティティに立てば、バストゥークと無縁ではいられない。両国に対する愛情は質が違い、互いに矛盾しない(注1)。私はときどき「祖国」と「故郷」という言葉で両者を区別する。天涯孤独の身ゆえ比較が難しいが、おそらくヒュームの「育ての親」と「生みの親」の区別に近いのではないかと想像する。

 バストゥークはガルカにとって重要な国だが、苦痛の歴史が複雑な感情を招く。「彼らはこの国をはなれないのでしょうか」とPivoは言う。彼はよそへ越した方が幸せだと思っているのだ。

 だが鉱山区の同胞たちにとって、この国は紛れもない故郷である。土地に対する愛着は奔放なミスラにさえあって、大陸で生まれた世代が多くウィンダスを故郷として慈しむ。いわんやガルカにおいてをや。今この国を発てばヒュームとの絆は完全に断たれるだろう。ガルカにとっての幸福とは、ヒュームと手を携えてバストゥークに生きることである。袂を分かつのは本意ではない。もしそうならとうの昔に出奔し、おそらくは島に戻り、二度とこの国を省みなかったに違いない。


 Pivoにパーティ・イベントへの招待を受けた。新しくヴァナ・ディールに参戦する冒険者のために、ワールドパスを購入する資金を調達しようと、リンクシェル・メンバー総出で狩りをするという主旨らしい。集合場所は南サンドリアのレストランである。時間を尋ねてきっと行くと約束してから、私は徒歩でひとりセルビナまで走った。

 セルビナにはこのあいだ釣り竿を贈ったCoolblueがいて、鍛錬目的のメンバーを集めていた。私が加わったとき誰か入れ替わったらしい。面子は18レベル赤魔道士のCoolblue、それにあとふたり。

 ヒュームの
Gallagher(ギャラガー)。暗黒騎士19、戦士5。
 ガルカの
Korgis(コーギス)。吟遊詩人18、戦士9。

 挑発役が揃っているので、獲物をひたすら殴っていたのが妙に記憶に残っている。

(付記:実は後にもう一人吟遊詩人が加わったのだが、本人が希望しないため、この人物に関する一切を記述しない。ただ最終的には5人いたのだということだけを述べるに留める)
 
左から2番目が私 ダムセルフライ狩りのメンバー(詩人1名を省く)

 狩りの対象はダムセルフライである。Coolblueはガガンボの腹虫が目当てだった(一人だけサポートジョブのないのに注目されたい)。聞けばされこうべなどは既に持っているそうだ。「あっさり入手した」というからひとの運はわからない。陸がにのふんどしも持っているので、足りないのは目下のところ「腹虫」だけなのだという。

 砂丘のダムセルフライは見ない方が珍しいくらいだ。腹虫なんぞ時間の問題と私もたかを括っていたが、倒せど倒せど一向に出ない。数を経るうち腹虫どころか虫の羽やクリスタルすら落とさなくなった。これを不運と捉えるか、シーフが加わってないせいと捉えるかは人それぞれである。焦る彼をよそに私はレベル20になった。拍手で祝ってくれたのが何だか申し訳ないような気がした。

 時間的な制約があって、狩りは長く続かなかった。Gallagherが抜けるというので、私もおいとました。ウィンダスに帰るのだ、ということだけを告げていく。どうせすぐサンドリアへ戻るはめになろうが、少しでもサルタバルタを見たかったし、祖国の懐かしい空気に触れたかったのだ。
 船旅を経て私はウィンダスへ戻った。モグハウスで休んだあと、爽快な気分で起き出し、Pivoとの約束を守るためクォン大陸へ向けて出発した。

注1
「生来宿無しの私は生誕地を知らず、そこに対する未練も執着もない。だからこそ初めて身を寄せたウィンダスに特別の愛着を覚えているのかもしれない」
(Kiltrog談)

(02.11.11)
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