その102

キルトログ、ジュノ経済を読み解く
ジュノ大公国(Juno)
 クォン大陸とミンダルシア大陸を結ぶ東西交通の要衝『ヘブンズブリッジ』の上に形成された新興の都市国家。重商主義.中立主義を国是とし、税関をはじめとする様々な国家規制が他の国に比べて緩い。その為か、ヒューム族の商人からゴブリン族の職人まで、様々な種族・職業のものが絶えず流入し、国際色豊かな町並みを形成している。
 また、古代の失われた技術を伝える唯一の国としても知られ、その産物でもある飛空挺は、今や諸国間の欠かせない高速交通手段となっている。二十余年前の獣人軍の大攻勢に際しては、小国ながら人間諸軍を束ねる盟主の役割を担い、アルタナ連合軍を結成して、これを撃退した。
ヴァナ・ディール観光ガイドより)
ジュノ大公国

 ジュノは謎めいた国家である。

 同国は、クォン、ミンダルシア大陸間にかかった橋の上にあり、地理的にもサンドリア、バストゥーク、ウィンダスが築く三角形の中心に位置する。ヴァナ・ディール史上、人類の誕生に次ぐ重大事であるクリスタル戦争において、三国のわだかまりを解き、新興国でありながらアルタナ連合軍の先頭に立った。地理でも歴史でも重要な国であるのは明らかである。それにもかかわらず、我々がこの国について知ることは決して多くないのである。

 私を含む未熟な冒険者の方々は、この思いが強い筈だ。ジュノは未熟者を必要としない。これには二重の意味がある。強力なモンスターが跋扈する土地柄であること。それに、国自体がコンクエスト政策に参加していないこと。

 ジュノは経済の担い手としてのみ、冒険者を求めるのである。モグハウスが設置されているのは、単に新しい社会層に対して便宜をはかっているに過ぎない。三国における政策とは根本的に意味合いが異なるのである。

 そもそもこの国がコンクエストに参加していないということは、自国以外の領土を所持する意志がないことを意味する。

 コンクエストとは何であったか。

 ヴァナ・ディールでは、「三国がそれぞれの首都以外の所有権を、冒険者の戦績によって奪い合う」という協定が成立している。これが国取りゲームのルールだ。陣地は流動的だが、基本的に三国は、よほどの非常時を除いて、圧倒的な優勢を期待できるお膝元の地域を奪われることはない。ロンフォール、グスタベルグ、サルタバルタは、それぞれサンドリア、バストゥーク、ウィンダスの事実上の所有地である。だがジュノにはそれがない。ジュノは最小限の土地しか必要としない。その点、橋の上に立っているというのは象徴的だ。世界経済の中心地にとって、領土は――人間の自然の営みに必要なぶんを除けば――市場、あるいは、商品としてのみ価値を持つのである。


 ペティとクラークという、ヒュームの経済学者の見解が興味深い。

 彼らは産業をその性格によって第一次、第二次、第三次と大別する。それぞれは(簡潔に言うなら)「農耕・畜産」「製造業」「商業など無形サービス」に相当する。彼らが言うには「国家経済は、より後ろの産業の就業者人口が多いほど先進性を増す」のだ。つまり第三次産業を担う人口比率が高いほど、経済的に進歩していることになる。彼らの説は現在の経済学の基盤をなすものである(注1)。これをヴァナ・ディールで見るとどういうことになるか。

 この三つの産業分類をあてはめると、サンドリア、バストゥーク、ウィンダスの各国は、第一次あるいは第二次の産業比率が圧倒的に高い。第三次産業はゼロではない(一般に政府の公的サービスはこれに含まれる)が、経済的に未熟な状態にあることは明白である。

 対してジュノは生産が希薄である。ほとんど第三次産業のみで成立していると言っていい。これが可能なのは、ジュノが担っているのが、自国の経済ではなくて、ヴァナ・ディールの統一経済だからである。世界市場における第三次産業の部分、その役割だけが切り離されて一つの国家に昇華しているのだ。それがジュノ大公国である。


 新興国であり、なおかつ領土を持たないながら、この国が国際的に強い発言力を持つのは当然だ。ジュノは経済の、世界の中心なのだから(注2)
 私見だが、ジュノが頑固に中立主義を貫くのも、おそらくはそれが理由である。


注1
 「ペティ=クラークの法則」。詳細は以下を参照
http://www.daito.ac.jp/~nakamoto/kougi2000/text0713.html

注2
「経済国家として、ジュノはバストゥークに非常に似たところがある。さながらジュノは後者を極限まで進化させたモデルのようだ。私には、バストゥークがジュノを参考に後追いしているように見受けられるが、上に述べたように、両国家ではヴァナ・ディールでの役割が大きく異なる。中心は二つも必要ない。おそらくジュノが存在する限り、バストゥークの発展は頭打ちとなり、第二次産業(鉱工業)の担い手に止め置かれるだろう」
(Kiltrog談)

(03.01.14)
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