その131

キルトログ、休む(――そして世界が変動する)

 友人の力を借りて、闇の手先の陰謀を打ち砕いた私だったが、その後モグハウスへ引っ込んだまま、実に1ヶ月以上も外に出ることがなかった。言わばささやかな休暇をとっていたわけである。

 ところが、私がのんびりと眠りこけているうちに、世界は劇的な――と言っていい――変わりようを見せていた(注1)

 そもそも本来なら、私がいちいち見聞きしたことに対して、そのつど説明を加えていくべきなのだが、それにしてはあまりに根源的な変化であるため、別に一項設けて、どのように新しい世界が広がったのかを、簡単に整理しておこうと思うのである。それは読者諸氏の理解を助けるだろうし、私自身の頭の整理にもなるだろうから(そう、白状すれば、実は何だかまだよくわかっていないのが実情なのだ。)

 私がこれから伝えることは、モグハウス備え付けの<ヴァナ・ディール・トリビューン>誌を初めとする、外部媒体に大半を依存する。信頼できる情報機関であるから、真偽を疑う理由は特にないのだが、やはりこうした手記を残そうとしている者の義務として、実際に世界の変化を確認しておく必要はあるだろう――果たして、それがいつのことになるのかはわからないが。


【エリアの広がり】

 四国協議の結果、冒険者はゼプウェル島と、エルシモ島への渡航が可能となった。このうち前者については、前項で簡単に説明したとおりである。

 エルシモ島は、ミンダルシア大陸の南東に浮かんでいる。島といってもクフィムのような小島ではなく、サルタバルタとコルシュシュを合わせたくらい(南はギデアスから、北はタロンギ、東はブブリム辺りまで)に匹敵する。ゼプウェル島も同程度の規模で、この二つの島で大陸ほどの広さにも達するから、冒険者にとっては、まさに新世界が開けたと言っても過言ではないわけだ。

 エルシモは活火山ユタンガ山を含む熱帯地域である。何よりミスラの里カザムがあるので、大陸生まれのミスラたちにとっては――私にとってのアルテパ砂漠がそうであるように――特別な思い入れのある土地となるだろう。

 新しいエリアはそれだけではない。アラゴーニュ地方の北東、聖地リ・テロアと、剣が峰で遮断されていた、クォン大陸の西端(バルクルム砂丘の西に位置する)ヴォルボーにも、冒険者が流入しているという噂である。


【新たなるジョブ】

 冒険者にとって嬉しいことに、東方諸国に伝わる武術、格闘術のノウハウなど、異国の技術も積極的に導入されるようになった。

 は、いわば東方の騎士である。独特の甲冑と、精神鍛錬に重きを置く独自の戦闘哲学を持つ。特に「刀」と呼ばれる片手剣の破壊力はすさまじい。侍は自身の魂を、文字通り刀に流入させて戦うのだ。

 東方文明において、侍を光とするなら、忍者は影の存在であった。彼らは暗殺と隠密術のプロフェッショナルで、一部は幻術なども身につけているという。このたび新しい時代を迎えて、ほんらい為政者に捧げられた先鋭技術が、自身の生存と世界の開拓のために使われることになったのは、まことに喜ばしいと言えるだろう。

 こうした東洋の専門職に対し、温故知新、我々の文明が新たに見出したのは、竜騎士といういにしえに伝わるジョブであった。

 竜騎士は飛竜をしもべとし、その背中にうち跨り、恐ろしいまでの跳躍力を活かして、「ランス」という特殊な武器で攻撃するという。竜騎士は飛竜との関係が密でないと勤まらないから、おなじ「騎士」であっても、ナイトとは全く性格を別にするジョブといえよう。

 最後に、召還魔法について触れなくてはならない。現存する記録においては、クリスタル戦争のおり、大魔法使いカラハバルハが最後に使用したという、この禁じ手の魔法は、どこか異なった次元から、特殊な能力を持つ超生物を「召還」し、一時的にしもべにする、という性格のものである。召還できる生物はさまざまで、小さな妖精から、神や悪魔に匹敵する幻獣まで様々らしい。一説には、その魔法を用いる者を召還士と呼ぶのだとか(現在確かなことを言うには、その情報はあまりに断片的すぎるから、ここでは以上を述べておくだけに留めたいと思う)。


【新しい敵】

 私が『四大獣人』と私が勝手に呼んでいるところの、ゴブリン、オーク、クゥダフ、ヤグードは、現在両大陸で日常的に見られるが、世界の辺境には、まだまだ別の獣人が生息していることが確認された。

 最も有名――特にガルカにとって――なのは、アンティカであろう。我々の仇敵である蟻獣人の存在は、歴史書に散見されるのみであったが、奴らは滅亡したわけではなく、アルテパ砂漠に今だ生存し、人間を襲っているものらしい。

 他に伝えられているのは、水棲獣人のサハギン、そしてトンベリである。トンベリはエルシモ島にある忘れられた邪神ウガレピの寺院に住み着いているそうだ。小柄だが大変凶暴だと聞く。奴らがウガレピを信奉しているのかどうか、手持ちの資料では詳細はまだわからない(注2)

注1
 この変化はバージョンアップディスク『ジラートの幻影』導入に伴ったものです。オールインワンパック(ジラートの内容を含む完全版)でゲームを始める場合、最初からこの内容を含む世界設定となります。
 
注2
「私のこれまでの呼び方を使うなら、『七大獣人』ということになりそうだが、実は生物的にはモーグリも獣人の一種だという。彼らがこの文脈で語られることがないのは、「獣人=人間の敵」という固定観念の外にいる存在だからだろう。
 獣人とはみなされない謎の亜人は他にもある。ギガースやグーブーがそうだが、エリアが拡大すれば他にも発見されるのではないか。また忘れがちではあるが、カーディアンが自己増殖に成功したら、新しい種と考えることもできるだろう。もっともその前に、「生物とは何であるか」を徹底的に論議する必要がありそうだが」
(Kiltrog談)


(03.05.03)
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