その162

キルトログ、ソロムグ原野で甲虫を狩る

 私は前回、ブブリム半島での狩りを切り上げてジュノに入った。そのさいソロムグ原野を通ったのだが、28レベルの戦士の目から、たわむれにソロムグ・スキンク(ラプトルの親戚)の強さを調べてみると、意外にも「丁度よい」相手と出た。レベルと職種にもよるが、これは一対一で戦って勝つことが出来る範囲内である。

 その時に脳裏をよぎったのは、自分の腕が上がったという感慨ではなくて、もうしばらく前のレベルであれば、集団でこれらの獣を狩ることが出来たろうに、という嘆息であった。

 今回私はソロムグ原野に出かけてきた。標的はダイビング・ビートルである。何しろ近頃は地虫とばかり面をつき合わせていたので、いつもと違う場所で、いつもと違う敵を相手にするのは、刺激的な経験だった。ヒュームのリーダー、Lamont(ラモント)(召喚士18、白9レベル)には感謝したい――私を誘ってくれたことにも、ソロムグ原野へ連れて行ってくれたことにも。

 我々がジュノ港の門から出たころ、クフィム島は大混雑で、どうやら6パーティがひしめき合っているようであった。一方ソロムグ原野はがらがらである(さもありなん)。我々と同じレベルの冒険者は少なく、1人か2人程度しかいないようだ。おそらくチョコボに乗って移動中の人たちだろう。パーティで戦っている人たちも見るには見たが、ずっと高レベルのようで、標的が全然違っていた。レベル20前後の一団は純粋に我々だけだとみえる。

 ソロムグは極地に近く冷涼だが、タロンギやメリファト同様、埃っぽい上に風が強い。頻繁に舞い上がる砂塵に視界を遮られるのには閉口する。我々は目を細めながら、崖に沿って南東へ下った。例の光沢がある岩が、小さな山脈のように、波をうちながら続く。その周辺にエビル・ウェポンが漂っている。いったいこの岩には、まがまがしい死霊が好んで寄り付く傾向がある。クフィム島の海底洞窟しかり、タロンギ大峡谷のメアの岩しかり。奴らに対して一種の磁力に似た性質を持っているのかもしれない――だとしたら、タルタル族が「ドロガロガの背骨」と名づけたのは、奇妙に皮肉の利いた表現だったと言えよう。

 やがて我々は崖に囲まれた小さな空き地に出た。誰が切り出したのか、無造作に丸太が何本も放り出されており、朽ちるにまかされている。空き地には2、3匹の大甲虫がかさこそと這い回っている。丸く切り取られた空を見上げると、1隻の飛空艇が、南東からジュノの方向へゆっくりと進んでいく。ちょうどこの場所は航路の真下にあるのだ。あの中ではウィンダスから往来する商人や、高レベルの冒険者たちが、慌しくも優雅な旅を楽しんでいるのだろう。そう思うとちょっぴりうらやましくもあるし、悔しいような気もする。


空き地の上空を横切る飛空艇
ダイビング・ビートル

 私は6番目のメンバーとしてパーティに加わったが、改めて考えると、なぜLamontに声をかけられたか少々不思議である。面白いことに前衛職に特徴的な重装備の盾役がいない。見かけはごついが、ガルカのSargain(サーガイン)は20レベルのシーフ(戦士10レベル)である。挑発の出来るふたりがシーフとモンクで、前線で身体を張るというのも珍しい。我々はガルカであるから、ヒュームやタルタルよりタフなのは事実だ(あるいはそれで選ばれたのかもしれない)。私はこれで普通と思っているからよくわからないが、彼らに言わせれば、ガルカの無尽蔵の体力はとてもありがたいのだとか。きっと我々がタルタルの魔法の才能を羨むのと同じ理屈なのだろう。

 そういうわけで、釣り役はSargainが担当した。手際よくブーメランを投げつけて一匹をおびき寄せる。連携は、彼が片手剣でレッドロータスを撃ち、私がコンボでそれに続く。タルタルのVivi(ヴィヴィ)(吟遊詩人19、白魔道士9レベル)は、曲で皆を鼓舞し、癒す傍ら、直接攻撃に参加する。エルヴァーンのZeer(ジーア)(黒魔道士19、白9レベル)とタルタルのMoody(ムーディ)(黒魔道士20、白10)が、どかんどかんと魔法を打ち込む。燃やし、冷やし、痺れさせてと全く容赦がない。

 私が甲虫と初めて戦ったのは、サルタバルタにある東の魔法塔の隠し通路である。その時の経験から、ひどく防御力が高いという印象があったが、このあいだクフィムで相手をした蟹のクリッパーと比べると、ずっと柔らかい感じがした。そのことを話すとLamontはうんうんと頷く。クリッパーにはシザーガードという技がある。蟹どもがこれを使うと、装甲がぐんと硬くなって、文字通り歯が立たなくなってしまう。一方甲虫は、名前の通り飛び上がって体当たりしてくるくらいだ。戦いやすさの差は歴然であった。


Sargainの剣が装甲を切り裂く

 狩りの前にLamontは、ダイビング・ビートルの強さは、クフィム島のランド・ワームくらい、と言った。その言葉に偽りはなかった。リンクにさえ気をつけていれば問題なく倒せる相手だし、得られる経験もミミズ並に高い。しかもこの場所は、クフィムと違って、夜になってもワイトら生ける屍が沸かず、安心して戦える。一番の利点は競争相手がいないことである。人間が舞い込んできたのはたった2度だ。道に迷ったのか偵察か、有人のチョコボが走り込んできたのが1度。そしてエビル・ウェポンと一対一で戦う冒険者が、空き地の入り口に姿を見せたのが1度。後者の人物は見事な剣さばきで、Sargainが獲物を物色している間に、思わず後衛のViviやZeerが、その強さに感嘆の声を上げるほどであった(ソロムグでは意外に一人で戦っている冒険者を多く見かけるものである)。

 この狩りの成果は凄まじく、全員がレベルを二つ上げるほどだった。そういうわけで私も22レベルになった。モンクは順調に育っている。駆け足で戦士の28レベルに近づきつつあるが、将来的にどちらを優先的に伸ばすかについては、正直いまだに思案の最中である。

(03.09.02)
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