その163

キルトログ、白夜を体験する

 4つの各層に競売の窓口を開き、群衆の偏りをなくそうというジュノ政府の試みは、ひとまずの成功を収めたと見えて、ここジュノ港でも、以前より格段に人通りが多くなっている。私は通りの真ん中に立ち、人が流れていくのを見ながら雇用の口を待っていた。通り過ぎる中には友人の姿がある。Myua、Illvest、Libross。そして読者氏がひとり。Leeshaも現れて、私の傍らでよもやま話をする。彼女は忍者だったが奇しくも私と同じ22レベルだった。

 待ち時間ばかりが過ぎていく中、ゲルスバ野営陣の宝箱のカギを入手し、飛空艇に乗ってカザムへ――ミスラの故郷へ行くことを考えた。今度の旅は道中の苦労を憂慮しなくていい。何しろ飛空艇に乗っているだけで到着する(怖いのは墜落だが、その手の事故が起こったという話は聞かない)。単に観光して戻ってくるだけだから、一人で行ったって構わないのだが、初めて空を飛び、異郷に降り立つ興奮を、誰かと分かち合うという考えは魅力的に思えた。

 パーティは回復役がいないと始まらぬ。22レベル前後の白魔道士は、たいていが既に仲間と活動中である。だがLeeshaが目ざとくジュノ下層に、ヒュームのOrwell(オーウェル)(白魔道士21、黒10)を見つけて、話をとりつけた。同じくヒュームのKoske(コスケ)(黒魔道士21、白10)、ミスラのFizz(フィズ)(赤魔道士22、白11)が加わって、白・黒・赤の揃い踏みである。後裔が決まると話が早い。我々が忍者とモンクなので、装甲の硬い戦士が望ましい。そういう点でガルカのMobill(モービル)(戦士22、モンク11)は文句なしの人材である。これでようやく6人が揃った。

 上層でシグネットをかけられるのは知っていたが、Orwellの弁によると、ジュノ港にもガードが配置されているという。案内して貰ってコンクエスト参加を済ませる。さてこの間にも時間はどんどん流れている。ようやくクフィム島に出撃が決まったのだが、既に4,5パーティがひしめいて混雑しているようだ。しかも出端にLeeshaが、食事の手持ちがないのに気づき、わざわざ一人で引き返して競売で買って戻る。調理を生業にしているにもかかわらず、既製品を競り落とさなければならなかったことで、彼女は随分と悔しがっていたが、そういう事情なら私の手持ちを分けてあげたものを。自分で買った分もあるが、ChyrisalisやLeeshaに作って貰ったものも相当数あるのだから。

たくさんの人出……

 洞窟を抜けた先には人間が密集している。あらゆる集団がこの場所で狩りをするので、獲物の取り合いになっているようだ。時刻は夜の零時を回ったばかりである。夜8時から朝の4時までは、島の各地にワイトが出現するので、無理な移動は禁物である。ここは夜明けを待って狩場を移った方がよい。以前の記憶にあるデルクフの塔前に陣取るのが適当だろう。

 オレンジ色の光が柔らかく万年雪を照らすころ、我々は一斉に塔へと駆けた。私の眼前にはKoskeの背中がある。彼は変わった人物で、腰縄やマント、指輪の類を除けば、黒い肌着以外に身に着けているものがない。確かにパーティ戦においては、前線の挑発さえしっかりしていれば、黒魔道士が直接攻撃される危険性は少ないが、それにしてもこの軽装ではいくら何でも寒いのではないだろうか?

 
 デルクフの塔前には、既に幾組かのパーティがいたが、先刻ほどではなく、狩りの獲物を奪い合うまでには至らない(別の集団にRagnarokとNaozの姿も見えた)。クリッパーという蟹がたくさんいるのでLeeshaが声を上げて喜ぶ。鍛錬の相手としてだけでなく、調理の材料である陸蟹の肉が取れることを期待しているのだ。

 Fizzが巨人に絡まれて、デルクフの塔へ逃げ篭る一幕はあったが、今回の獲物はおおむねこの蟹であり、時に気が向いたときにグレーター・プギルを海岸から引っ張ってくるくらいだった。戦闘は特に問題がなく進んだ。蟹が以前ほど恐ろしい装甲を誇るとは思えなくなったのは、二つの理由によるだろう。若干とはいえ前衛のレベルが上がっていること(それに個人的に武器を新しく買い換えていたこと)、黒魔道士が一緒にいること。特に攻撃魔法はこういう硬い敵に重宝する。Koskeの雷でクリッパーをしとめたとき、私が「ナイス・サンダー」と言うと、彼は親指を立てて言ったものだ。「裸でもやる時はやります」

 私が感心したのはMobilの挑発である。多くの戦士は、単に敵の気を引き付けるだけではなくて、めいめい独自の台詞を言うのであるが、気のきいたものとなるとなかなか難しい。味気なくても気取り過ぎてもつまらない。私の中には適切な語彙がなかったのだが、「お前の敵はこの俺だ」というのは簡潔にして要領を得ているではないか。それにいかにもガルカ族が口にしそうな台詞だ。ちなみにLeeshaの挑発はこうである。「〜さん、こっちですよお」。ひとつ私も何かかっこいい文句を考えるとしようか。

 
 狩りをして2日目のこと、夜の帳が下りたが、いつになく周囲の雪と岩がエメラルド色の光を返している。Koskeが何だか明るいねと言う。Fizzが「白夜?」と返答する。なるほどこれが噂の白夜というものか。私はこの美しい天然の意匠に見入ったのだが、仲間たちの弁によれば、曇っているのが残念だという。晴れていればオーロラが北の空に輝く。その時にはライト・エレメンタルが現れて、見るものを夢幻に誘うあやしい光を放ちながら周囲を漂うらしい。何しろオーロラ自体が珍しいので、ライト・エレメンタルが見られるのは稀なことだそうだ。むろんこれはモンスターには違いないが、ご存知の通りエレメンタルは魔法の使用に反応して襲いかかって来るので、近くを通り過ぎるぶんには全く無害である。まじまじと観賞しても何の問題もないわけだ。こう聞かされると、白夜という希少な現象に遭遇できたにもかかわらず、自分がひどく損をしている気がした。特にこの曇天が嘘のように翌朝はからっと晴れ上がったものだから、余計に惜しい感じが募るのだった。


日が暮れても明るい空

 狩りの終盤は、私の疲労が頂点に達して、倒れそうだったので、早めに切り上げて貰うことにした。朝を迎えて、死霊どもが霊界に戻ってから雪原を駆けた。走る間もどうかすれば気を失いそうだった。それくらい疲れていた。海底洞窟に入ってから、Koskeがダンシング・ウェポンに絡まれてひと騒動があったが、無事に逃げ切った。彼の軽装が命取りにならなくて幸いである。

 23レベルになった私は笑顔で仲間と別れた。次回こそは晴れの日の白夜を体験して、何とかオーロラとライト・エレメンタルに遭遇したいものである。

(03.09.05)
Copyright (C) 2003 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送