その164

キルトログ、第三の鍵を入手する

 前々からエルシモ島旅行のために、各獣人が落とす鍵を集めている。全部で三本あるうち二本は既に揃った。パルブロ鉱山、ギデアス。残るはゲルスバ奥地のユグホトの岩屋で、オークが落とす鍵を入手すれば、ジュノでカザム行き飛空艇パスと交換して貰える筈である。

 以上の成果に友人たちの協力は欠かせなかったが、今回も甘えさせて貰った。連絡をとってきたApricotに対して、サンドリアで落合おうという約束を取り付けた。友達に声をかけているうち人数が膨れた。例えばMyuaや、ジュノで時間を持て余していた――失礼――LibrossとSif。重ねて皆に御礼を言おう。彼らの善意が、鍛錬に次ぐ鍛錬の日々の中の、ちょっとした息抜きになっていてくれれば嬉しい。


 Apricotと話したとき私は野暮用でウィンダスにいた。従ってサンドリアに行くには大陸を駆け抜けていかねばならなかった。飛空艇が使えず距離的にも遠い私が最も遅れた。ジュノやタロンギでチョコボを乗り継がなかったのが祟って、鳥はジャグナー森林で私を振り落としてしまい、徒歩で走るうちに野良虎と戦う羽目になった。虎は手ごわく一命を落としかけ、瀕死の体力を回復するのにまた時間がかかった。こうして仲間たちが待ち呆ける中、私はサンドリア門前に、ようやくラテーヌ高原で借りたチョコボを乗りつけることが出来た。

 まさかオークどもに後れを取るとは考えづらいが、念には念を入れて、私は久しぶりに戦士の鎧を着た。仲間には28レベル前後に準じたジョブになって貰った。Apricotは白魔道士、Librossは赤魔道士、Sifは黒魔道士。彼らは皆26レベルで、唯一の例外が、ゲルスバの奥地でオーク狩りをしつつ合流したMyuaだった。彼女は28レベルの黒魔道士だった。何というか魔道士だらけである。

 通常モンスターが落とす品物を取りにいくにはシーフが欠かせない。というのは彼らの特殊能力によってドロップの確率が上がるからである(この特性をトレジャーハンターという)。従って戦士に魔道士ばっかりというのは片手落ちなのだが、敵は弱いし、Myuaを除いては顔見知りばかりが集まっているパーティの性格上、和気あいあいと狩りが出来れば、ちょっとしたレクリエーションになろうというものだ。鍵なんかは数打ちゃ当たる。オークどもには悪いが、次々と数打つことが出来るほど実力の差は歴然なのである。


 Librossが先導でユグホトの岩屋に入った。私が過去Balltionとおっかなびっくり入った洞窟である。それ以外では温泉に浸かるのに通過したくらいで、まじまじと観察することもなかった。いま改めて余裕を持って眺めやると、壁はガラス質を多く含むのか、ざらざらして特殊な光沢を放っている。下から青白い光を反射しているらしく、友人たちの顔は――私もそうなのだろうが――さながらお化け屋敷の幽霊のようだ。


ユグホトの岩屋
天井から水が滴り落ちる

 洞窟というとパルブロ鉱山や、ナナー・ミーゴの隠れ家のある隠し通路、シャクラミの地下迷宮などを連想するが、面白いことにひとこと洞窟といっても、その印象は互いに大きく違う。ユグホトの通路は天井が低いが横に幅広い。青白い光が洞窟内を満たしているので幽玄的な雰囲気がある。広間に天井から水が滴り、石筍の間に水溜りを作っている場所がある。ここは単に通り過ぎるだけだが、闊歩するオークどもが篝火(かがりび)に照らされる光景には不気味な迫力がある。実力は余裕を生む。28レベルでよかった。洞窟一帯のオークは相手としては問題外で、心配性の私でも安心するほど実力差は歴然だったからである。


 シーフがいないとはいえ、山砦の箱のカギは、ユグホトの岩屋奥、あるいはゲルスバ砦のオークの誰がが持っている。しらみつぶしに当たれば入手に時間はかかるまい、と思っていたら、本当にあまり時間はかからなかった。洞窟の床の上にちゃりんと転がり出た鍵を持って、さてと我々は息をついた。ここからだと温泉が近い。Myuaが瓶を持ち水を汲まねばと駆けて行ったので、どうせだから疲れを落とすために我々も浸かっていくことにした(断じて覗きに行ったわけではない)。


 先日この温泉を訪ねた時は真夜中で、紫色の夜空しか見えなかったが、現在は夜明け前である。黄色い太陽がとんがり岩の向こう側に顔を出すと、朝方の山に特有の霞が晴れ、絶景が眼下に広がった。ゲルスバの砦が正確に王都に狙いを定めていることに、Librossは懸念を寄せているようだが、友人と温泉に浸かっているようなときは、鍛錬の毎日の疎ましさや、闇の勢力への危惧などは忘れて、大いにリフレッシュしたいものである。私は肩の力を抜いて、心地よい風と岩湯の温かさを楽しんだ。

絶景哉

 さて三本の鍵は揃った。ジュノ港の役員にこれを渡せば、カザム行きの飛空艇パスと交換してくれる筈である。このあと私はミスラの里へ赴く。大陸南のエルシモ島には、果たしてどんな驚きが待っていることやら。

(03.09.13)
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