その2 キルトログ、自宅を訪ねる ウィンダスは世界的にも景観が美しいと評判である。森の区を出て、隣りのエリアに移っても、絹を擦るように流れる透明な川と、もこもことした森が続く。水車がゆっくりと羽根を回すのが見える。海に向かう桟橋に、古びた木造船が結わえつけられている。家々は木造で、道は踏み固められた土だ。人口の多さは折り紙つきなのだが、風景のせいだろう、都会の忙しなさは感じられない。私はすっかりここが気にいってしまった。 ただし、国土が広いのは面倒である。自分が歩いたのはいちエリアにすぎなかったが、それでもたちどころに道に迷ってしまった。同業者である冒険者たちと随所ですれ違う。しかしみな一様に走り回っていて、道を尋ねることすらおぼつかない。ときどきガルカが珍しいのか、立ち止まって私をじっと見つめる人々もおり、これには閉口した。私は自力でモグハウスを探し当てることにした。 モグハウスは冒険者の集合居住区で、森の区の北西にあった。木製の柱が二本はなれて立ち、そこを渡した板に、モグハウスを示す特有のマーク――輪からぶらさがる三本の鍵――が刻まれている。そこを潜ると小さな広場になっていて、のっぽのヤシの木に囲まれて、ドームが口を開いており、幅広の階段が真っ直ぐ上へ続いている。入り口はここ一つではなく、四つある各エリアにそれぞれ開いているようだ。つまりモグハウスには四区いずれからも入ることが出来るのである。 ジャック・オブ・何たらというのはここにいた。タルタルだとばかり思っていたら、どうやらカーディアンという名前の、カカシに命を吹き込んだ自動人形らしい。
背は私と大して変わらぬ。つまり平均的なヒュームよりも大柄である。頭はT字型で小さい。ヤシの実のような胴体をしており、両腕も先端が丸くなって、やはりずんぐりしている。三つ付いている車輪が足代わりのようだ。右手には背丈を大きく越える杖を握っている。 「ワタシ☆ハ☆ジャック」 奇っ怪な声で話す。顔がないのに不思議に愛嬌を感じるのは、全体的に丸っこい感じの作りだからか。さすがは魔法の国だ、と私はテクノロジーに感心した。ウィンダスを歩くと、いたるところで動くカカシの姿を見ることができる。他国にはカーディアンはおらぬ。ウィンダス人は、「彼ら」をミスラやタルタルに順ずる「国民」とみなしているのだ。これもこの国特有の考え方といえるだろう。 チケットを手渡すと50ギルを褒美にくれた。懐のさみしい身にはこれはまことにありがたい。 モグハウスに集う冒険者は、膨大な数に上る。しかし部屋は個人専用で貸し切りである。他人を招待することすら出来ないのだが、そのぶんプライバシーは確固として守られているのだ。 部屋は円形をしているが、一人どころか、五人でも寝られそうなほどの広さがある。オレンジ色の絨毯がふかふかと暖かい。柱や床などの骨子は石で支えられているが、壁は木造である。中央に小さな泉があって、壁から流れ出る清水を受け止めている。さらさらさら、という音が心地よく部屋に響く。なかなか悪くない。 部屋にはモーグリという面妖な妖怪がついている。猫めいた耳、つりあがった目、ピンク色の鼻。ミスラと違うのは、枕ほどの大きさで、こうもりのような小さな翼をはためかせ、いつもぱたぱたと宙に浮いている点だ。肩からカバンを斜めに掛けている。クポ、クポと鳴く。性質が穏やかで、ぬいぐるみ然としているので、彼らをこよなく愛する人も少なくないという。 モーグリは世話焼きの生き物らしく、冒険者の荷物の整理や、部屋の掃除をやってくれる。基本的に部屋の内装は殺風景だが、家具や絵画を持ち込んでインテリアを整えることは許可されている。冒険者はここで充分な安息を得ることができる。ジョブを変更したり、モーグリに荷物を預けたり、種と植木蜂があれば植物を栽培できたり、とやれることは多い。
とはいえ、モーグリに何か預かってもらうほど物持ちではないので、初級モンクの証である白帯だけを締めて外へ出た。これから存分にこの国を散策しようという魂胆である。 解説 モグハウスについて ジョブについて プレイヤーは所属国で専用の個室モグハウスを与えられます。 モグハウスには上記のほかに、入ったときにHP,MPを完全回復できるという効果を持ちます。もっとも、L3ボタン(左レバー押し込み)を押せば、いつでもその場にしゃがみこんで休息をとることができるので、この目的でモグハウスに帰還する冒険者は少ないでしょうが(この場合、15秒を経過すると徐々にHP,MPの回復がはじまります)。 冒険者どうしが同一のサーバーにいる場合、たとえ国が遠くはなれていても、アイテムやギル(貨幣)を郵送することができます。各国のオークションハウス(競売所)前にある郵送員に頼めば、相手の冒険者のモグハウスに荷物が届きます。届いた品物は「ポスト」を開くことで確認できます。(サーバーに関してはこちらを参照) モグハウスは完全にプレイヤー個人の部屋であり、他人を招待することはできないのが残念ですが、木工ギルドに入って家具を作るなり、調度品を買ってくるなどして、インテリアの充実を楽しむことができます。 ジョブは、モンスターとどういう手段で戦うかの選択と言ってもいいでしょう。他のファンタジーゲームでは「クラス」「職業」などとも呼ばれています。職業と言ってしまうと生産ギルドと混同してしまう危険がありますが、Kiltrogはたまにジョブのことを「職業」と呼ぶことがあります。 各ジョブは、ジョブに固有のジョブアビリティと言う特殊能力を持っています。これらは経験を積み、一定のレベルに達することで新しく覚えていきます。使用するのに特別なペナルティはありませんが、原則として一度使うと一定時間使えなくなるので、使い方を考えなくてはいけません(再度使えるようになるまでのタイムラグはアビリティによって異なります) プレイヤーが最初に選ぶことのできるジョブは全部で6種類あります。FFファンにはおなじみでしょうが、簡単に説明をしておきましょう。 戦士、モンク、シーフ、白魔道士、黒魔道士、赤魔道士 特定の条件を満たすとナイト、暗黒騎士、獣使い、吟遊詩人、狩人になることができます。これらはエキストラジョブと呼ばれますが、最初から就くことはできません。 (追記:のちに、侍、忍者、竜騎士、召喚士が追加されました) 戦士はほとんど全ての武器、防具を装備することができる戦のプロです。 原則として魔法はまったく使うことができませんが、物理攻撃に長けています。レベル5で覚えるアビリティ「挑発」は、敵のターゲットを自分に向けさせる技で、魔道士への攻撃をふせぐ大事な能力です。 装備にお金がかかるという短所はありますが、戦士の役割どころの重要さは、あまたあるファンタジーの物語において既に明らかだと思います。 モンクはもともと「修行僧」という意味の英単語ですが、ここでは少林寺の闘僧のような、格闘家のニュアンスで使われています。主に拳や片手棍などの武器で戦います。相手の攻撃を受け流すよりかわすことを身上とするため、防具は簡単なものに限られてしまいます。戦士同様、魔法はまったく使うことができませんが、装備に比較的お金がかからないのは魅力かもしれません。 挑発が使えないのが難点なものの、初期ジョブ中最大の体力とクリティカルヒット(いわゆる会心の一撃)率の高さが特徴です。本編の主人公Kiltrogも最初はモンクとしてプレイしています。 シーフは「盗賊」です。どうしてもダーティなイメージがつきまといがちですが、人間社会を生き抜くのに必要な術に長けたアウトサイダーで、演じるには面白いキャラクターではないでしょうか。 戦闘は魔道士より少し上な程度で、お世辞にも強い方とは言えません。敵からアイテムを奪うアビリティ「盗む」や、一定レベル以上で戦闘後のアイテム摂取率が上昇するなど、主に金品の入手面での特長が目立ちます。プレイヤーが頭を使わないとシーフの能力を発揮することは難しく、その意味では上級者向けかもしれません。 白魔道士は回復系の魔法に優れた魔法使いです。白魔法は味方を助ける補助・回復魔法が大半で、敵を攻撃するような性質の呪文はあまり覚えることができません。装備品も限られ、特に「刃を持つ武器を装備することができない」という設定は、なつかしのテーブルトークRPG『D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)』を連想させます。 とはいえ黒魔道士よりも攻撃力には優れているので、MPが尽きたときには肉弾戦に頼る必要があるでしょう。 いっぽう、黒魔道士は攻撃呪文の達人です。一般的に魔法使いと言って連想されるのはこちらの方かもしれません。 炎、水、岩、雷とありとあらゆる属性の魔法で敵を襲います。レベルが低いうちは頼りになりませんが、多くの呪文を覚え、MPが増えるにつれ絶大な力を手にいれることになります。 反面、代償として白魔道士よりも貧弱な装備しか許されないため、強力な物理攻撃にはひときわもろいところがあります。 白でもなく黒でもない、赤魔道士は、白黒両方の魔法を使うことができるうえ、戦士としての実力にもなかなかの素質を見せる、万能なジョブです。加えてレベルが上がれば、武器に特殊な属性を加えることができる赤固有の魔法群を覚えることもできます。 ですがそのぶん成長が遅く、いずれの能力も専門家にはどうしても劣る、という短所があり、中途半端に終わらないためにはプレイヤーの判断力が必要不可欠です。 天才で終わるか、器用貧乏で終わるかは紙一重と言っていいでしょう。 プレイヤー・キャラクター(PC)はいずれかのジョブで冒険を始めますが、モグハウスを訪れさえすれば、いつでも好きなジョブにチェンジすることが可能です。ただしキャラクターの強さはジョブのレベルに影響されるので、低いジョブに変えてしまうとHP(体力点)やMP(魔力点)まで下がってしまいます。 例) 黒魔道士12レベルのBargessは、1レベルの戦士にジョブチェンジした。 彼のMPは0になり、一切魔法は使えない。 おまけにHPも下がり、1レベルの戦士相応の体力にまで落ちてしまった。 戦闘や生産のスキルは少々事情が異なります。表面的にはHPやMP同様、レベル相応に下がってしまうのですが、実際に低くなっているわけではありません。両スキルはジョブレベルにあわせた上限値が設定されています。自分のスキル値がそれを超えている場合は、一時的にその上限値で頭打ちとなります(ジョブレベルの上昇とともにスキル上限値も上がっていきます)。 スキルレベルが、そのときのジョブレベルにおける上限値にまで達していた場合、ステータス画面で数値が青く表示されます。 例) モンク13レベルのMantarouは、格闘のスキルが40レベルに達している。 彼は戦士にジョブチェンジをした。 1レベルの彼は、HPとMPがレベル相応の値になった。格闘レベルは4であり、ステータス画面では青字で表記されている。これは、1レベル戦士の格闘スキルが、4レベルで頭打ちとなるからである。この青字現象は、格闘スキルの上限値が40レベルを越えるまで続く。青字のうちはスキルをそれ以上あげることができない。
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