その8

キルトログ、最初の仲間に出会う
西サルタバルタ(West Sarutabaruta)
 魔法都市ウィンダスの西部に広がる平原。
 この地は、古代遺跡が点在しており、タルタル以前に住んでいた種族の存在が確認されている。
 北の方には、『星降る丘』と呼ばれる、不思議な場所があり、寒い夜に夜空を見上げると、星が落ちてくる、という伝説がある。
(ヴァナ・ディール観光ガイドより)
 港をふらふら歩いていた私をつかまえ、声をかけたのは、3人のミスラであった。今ひまですか、と尋ねられて困ったが、別にスターオニオンズ一行が逃げるわけでもないので、はいと答えた。聞けばモンスターを狩る仲間を探しているのだと言う。特に目的があるわけでもないそうなのだが、しばらくの間、私が協力することになった。

 彼女たちの名前は
Willia(ウィリア)、Dorry(ドリー)、Size(サイズ)というのであるが、みんな赤か黒の魔道士であり、肉体派ともいうべき筋肉馬鹿は私ひとりである。

 いささか不安であったが、頭数とは恐ろしいもので、ためしに西サルタバルタでキャリオンクロウに切りかかると、あっという間にずたずたにしてしまった。経験の足しにはあまりならないが、パーティ戦というものの効率の良さに驚き、みな一様に「強い」と感嘆の息を漏らした(注1)

 だが特殊攻撃をしてくる敵は少々やっかいであった。意気があがってクロウラーなどを相手にしたが、ときおり毒の息を吹きかけてくるし、仲間が近くにいれば寄ってくるしで、運が悪ければ減り続ける体力のまま手をこまねいて、HPに戻されるのを見ていなければならなかった。

 そこまで戦を続けていると、モンクが一人しかいないという事態がいかにも窮屈に思えてきた。
 私が先に殴りかかればいいのだが、少しでもタイミングがずれると、先にモンスターに魔法がかかってしまい、彼らも馬鹿ではないから術者に向かってまず飛びかかる。クロウラーなどはいも虫のくせに意外に俊敏で、ついていくのに苦労した。これは今後のパーティプレイで考えなくてはならない課題となった。


 私たちはゲートからそう遠くへは離れなかったが、ときおり醜悪なゴブリンどもが迷い込んでくることもある。傍らで悲鳴があがったのでかけつけてみたら、ヒュームの女性が助けを求めている。下っぱのゴブリンなど私たちの敵ではない。たちどころに粉砕すると彼女は礼を言った。
Mare(メア)さんという名の赤魔道士で、別のモンスターと戦っている最中に後ろから襲われたのだ、という。まったくもって獣人どもの卑怯さにはあきれ返るばかりだ。

 さいわい彼女は4レベルで私たちとたいして強さが変わらなかったし、何よりもケアル(注2)が使えることから、これも縁だと仲間になってもらった。
 これで5人の所帯になったが、全員が毒を喰らってHPに戻されたさい、残念ながらWilliaが抜けることになった。せっかく知り合えたのだが仕方がない。私たちは時間が来たら(注3)またHP前に集まろう、と約束して散会、それまで私はのんびりと身体をやすめることにした。


 約束の時間だが、集合場所に戻ると誰もいない。はてと回りを見渡すと、つんつんとMareに背中をつつかれた。ガルカは目立つので、こういう待ち合わせは得である。ウィンダスにおいてはなおさらだ。
 ほどなくSizeとも合流し、西サルタバルタへ出稼ぎに行く。夕陽の落ちる平原の美しさにみんな感動したが、このような美しい光景の陰にも危険は潜んでいる。ヴァナ・ディールでは油断は常に禁物なのだ。


 この頃になるとすっかりMareがリーダーのようになっていて、私もどの獲物にとびかかるか彼女にお伺いを立てていた。

 そのうちに夜が暮れ、私たちは前哨基地(
アウトポスト)に身をやどした。ここはかがり火がたかれてあるし、強い冒険者たちがたむろしていて頼もしい。ここにはHPもある、とMareが言った。彼女はいろいろと物知りなのである。

アウトポスト アウトポスト

 Sizeは後で「HP設定をしておきたかったが、建物の外に(クリスタルの柱が)見えなかったので遠慮した」と告白した。実のところ私も、とある冒険者の
バザー品――モンクでも付けられるブロンズ製の装備一式――に心ひかれるものがあったのだが、あまり迷っていたら、仲間に迷惑をかけると思い見送ったのである。

 皮肉なことに、こうした遠慮はするべきではない、という教訓はすぐに学べた。直後、Mareの判断で挑んだジャイアントビーは、一撃で分不相応な相手だとわかるほど強かった。丈夫なだけが取り得の私の体力はどんどん削られていく。
 そのうちにSizeが倒されてしまった。ハチは標的を見失ったのか、ぶんぶん羽音を響かせて、遠くへ飛んでいってしまった。
 私たちは、失った体力を回復せんと座り込んだが、突然何者かの一撃を食らった。私はどうと倒れた。何が起こったのかさっぱりわからなかったが、どうやらハチが舞い戻ってきたらしい。残っているのはMareだけである。だが警告を発する間もなく、彼女も針に刺されて命を落とした。

 我々のパーティはあっけなく全滅した。


 見覚えのあるHP前で私たちは別れた。いろいろとあったが今日得られた経験は大きかった。実際に私はレベル4に成長している。

 だがそれよりも、仲間を得たときにどう戦うかについてのノウハウが得られたことは貴重だった。連携をスムーズにするためにも、パーティで約束ごとはしっかりと確認しておく必要がある。油断は絶対に禁物だ。サルタバルタでさえ危険と隣り合わせなのだから、遺跡に出向いたときには一瞬の油断が生死を分けることだろう。

注1
 パーティプレイのさいに得られる経験値は、人数で頭割りになった値に若干のボーナスを加えたものになります。パーティの中でレベル差がある場合、いちばん大きなレベルの人が最も多く経験値を貰います。これは強い冒険者のパーティにただ参加しているだけで、弱いキャラクターが強くなるのを防ぐため。このルールがあるので、レベルが3以上開いた者同士が組むメリットはほとんどなくなり、必然的に同じような強さの冒険者たち(差は2レベル以内)がパーティを作る傾向になっています。

注2
 ケアルはHP回復の魔法。効果がアップしたケアル2ケアル3、最高級のケアルガという魔法もあります。

注3
 この日はワールドカップ。日本対ロシア戦があったので、2時間あまり人がごっそり消えました。



解説

駐屯地(アウトポスト)について
バザーについて


 上記で登場するアウトポストは、コンクエスト政策の駐屯地です。リージョンを制圧している国のガードが出張していて、自国民の面倒を見てくれます(他国の冒険者がサービスを受けるときは、お金を取られます)。
 ここでのサービスは、シグネットのかけ直し、ポーションや毒消しなどの出張販売、HPの設定などです。役に立つうえ目印になりやすいので、冒険者が集まっていることも少なくありません。
 ところで上記で「外にHPがない」と言っていますが、アウトポストは小屋のような外見にもかかわらず、中に入ることはできません。HPはシグネットをかけてくれるガードに話しかけて設定してもらいましょう。


 文中でKiltrogが触れている、バザーシステムについても説明しておきます。

 バザーとは、冒険者同士がアイテムを売り買いする行為のことです(一部、譲渡や売買の不可能なアイテムが存在しますが)。自分がそのとき所持しているアイテムを売りたいと思った冒険者は、「バザー」コマンドを呼び出して商品を選び、値段の設定を行います。
 ひとつでもバザーに出している商品があるとき、その冒険者の名前の前に、皮袋のかたちをしたアイコンが表示されます。
 このアイコンを持つ冒険者を「チェック」することで、商品の中身を見ることができます。もし買い手の気に入った商品があり、売り手のつけた値段を支払うなら、売買は自動的に成立します。このとき売り手が特別な行動をとる必要はありません(お客さんに礼ぐらいは言うべきでしょうか?)。
 買い手にチェックされるとき、売り手は宣伝文句を表示することができます。うまい宣伝文句をつけて売上を倍増させましょう。

 このバザーシステムはたいへん便利なので、ヴァナ・ディール中の冒険者たちに広く愛用されています。商品もさまざまで、使いふるしの武器や防具、余計に手に入れてしまったクエストアイテム、他国から安く仕入れてきた商品、ギルドで生成した道具など、実に多種多様です。頭を働かせれば、転売して儲けることも可能です。店よりも安い値段設定になることがほとんどなので、買い手にとっても非常に魅力ある市場となるでしょう。

 なお、人の多いところで、バザー設定をしたキャラクターだけを置いておき、オンラインに繋いだまま、プレイヤーはゲームから離れる行為――これを寝バザーといいます。多くの場合、こうしたキャラクターは座りこみ、回復のポーズをとったままじっとしていることがほとんどです。前述したように、売買は買う方が一方的に行動するので、ちょうど自動販売機のように、何もしなくても客が勝手に商品を買っていくので、このような行為が可能なのです。
 寝バザーはどこの国でも見られますが、一番さかんに行われているのはジュノ大公国のようです(注:開始当時はバストゥークで名物化していました)。人の所持品を勝手に見るのはためらわれるという人も、遠慮なく見て目当ての商品を探しましょう。
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