その9 キルトログ、帽子屋の広告塔となる モンクの武器が港で売ってあるとMareに聞いた。200ギルもあれば十分だと言う。 パーティを解散したのち、さっそくキャットバグナウを購入した。これは握力を測る器械に、鋭いかぎ爪がついたような代物である。使い勝手は最高だが、おかげで持ち金は16ギルにまで減ってしまった。何とかせねばならない。 帽子屋バレン・モレンが新作を出したというので、水の区じゅうのタルタルに見せてまわる、というアルバイトをすることになった。
タルタルは帽子が大好きで、じっさい店の前で駄々をこねている子どもまである。この親子は曜日につき一つづつ帽子を持つそうだから、お洒落への熱中も大したものだ。 どうせ水の区全域を回るのなら、ミスラやヒュームなどの他人種にも見せびらかしておきたい。私はカーディアンにすら宣伝するという徹底ぶりで広告塔をまっとうした。 水の区はずれの2階屋に住んでいる偏屈な金持ちの家に押し入り、帽子だけ見せびらかして帰ってくるなど、やっていることはほとんど夜盗である。訴えられなかったのが不思議なくらいだ。これではガードにお縄にされても文句はいえまい。 ただそうした努力は実るもので、外国からも注文が来ているという大成功ぶりで、喜んだ店主は200ギルの労働料のほかに風切り帽子というものをくれた。これは今まで剥き出しであった頭部を守るのに絶好であるが、どこをどう見ても自分に似合っていない。背に腹は変えられぬというものの、あんまりミスマッチなので、かんじんの冒険が始まるまでいったん脱いでおくことにした。 耳の院で「魔法の材料を探している」という教官があって、ちょうど手持ちの鳥の羽根と、ララブのしっぽをゆずったところ200ギルを戴いた。これで一気に金持ちになった私は、港の防具屋でローブを買った。これをまとって帽子をかぶったら前ほど違和感がない。そう考えると安い買い物だった。 意気の上がった私は外で戦いを挑むことにした。それでも慎重さは忘れないつもりである。
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