その31 キルトログ、再びバストゥークへ起つ しばらくウィンダスの空気を満喫したあと、今度こそ帰ってくるものかという思いで旅支度をした。 この頃には、ウィンダスが再びコンクエストで勢力を盛り返していたようだ。というのも、大道芸人のテントが開いていたからである。私が懐かしい彼らを眺めていると、傍らのタルタル氏が 「またコンクエストで一位になったのかなあ」 とつぶやいた。私もそう思っていました、と返事をする。彼とおじぎして別れたあと、そうなったら無理にバストゥークへ行く必要もないのか、などと考えて、少し複雑な気分になった。 これはずっと後の話だが、私の友人のDenissは、バストゥークからサンドリアに行き、ジュノにまで足を伸ばして、結局ウィンダスに戻ってきたのだという。今は釣りをメインに悠々と暮らしているそうだ。故郷が恋しくなって帰ったが、やはりウィンダスはほっとする、と彼女も似た感想を漏らしていた。結局彼女とはバストゥークで一度も会うことがないままであった。 天の時が過ぎ去ったか、自分がバストゥークに執着するべき理由は薄れてきた。だが私は戻らねばならぬ。ここでウィンダスに留まっては、逃げてきたのと何らかわりない。私は、かの国の国民と満足に話してもおらず、ただ鉱山や荒野をうろついて、ときどき亀をぶちのめしていただけである。それではバストゥーク人も喜ぶまい。ウィンダスを訪れた人が、ヤグードの思い出ばかり残すとすれば……私だって頭を抱えたくなる。 私は意を決して門を出た。マウラへ遠出するのもこれでもう2度目となる。 船を待つあいだ、Clive(クライブ)というヒュームの戦士と知り合いになった。 この時のマウラの冒険者連中において、私は下から2番目の強さであった。Cliveは7レベルと私よりさらに下である。失礼ですが、と前置きして行き先を聞いたら、バストゥークに武器防具を買出しに行く途中なのだと言う。 乗船中、私はバスへ向かう道の困難さを説いた。特にサンド・バットは厄介である(私も実際どうやり過ごしてよいか悩み続けていた)。Cliveは私の話にふんふんと聞き入っている。船旅は初めてらしく、モンスターが出ると大変だから、と甲板に出ようとしない。なので私も付き合ってずっと船倉にいたが、上から聞こえてくるのは魚との派手な戦闘の音ばかりで、不用意に上がらなくて助かった、と二人して胸をなでおろしていた。 どうせ目的地が同じなら、せっかく知り合ったCliveと一緒に行ってもよかったのだが、二人だとお互いに生命の保証は出来ない。ゴブリンを穏便にやり過ごすのは、一人の方が圧倒的に有利だ。というわけで、お互い別々に行くことになった。私の力が充分であれば、目的地まで連れていってあげられるのだが……。
結局私は、一度セルビナに戻ることを余儀なくされた。 サンド・バットは、通過する誰かがやっつけていったものらしく、影も形もない。だが砂丘のゴブリンに襲われて生命を落とした。これは純粋に油断によるものである。コウモリばかり気にしていたせいかもしれない。 Cliveに連絡をとると、彼は地図を持たない状態でうろついているという。私は驚いた。自殺行為だ。幸いなことに、どこかのパーティに入れてもらって先導して貰っているらしい。バストゥークへ着いたらまた連絡を、ということでいったん会話を打ち切った。 私は私で、ひとのことにかまっていられる状況でもない。今度こそサンド・バットは洞窟に待ち構えていたが、これは強い冒険者が通るのを待って何とかやり過ごした。むろんこういう方法には、人通りの多い時間帯でなければ頼ることができない。 コンシュタットは一見のどかなのだが、やはり恐るべきところだ。バストゥークに向かう途中では特にそう思う。 というのは、こちらからはほとんど上り道だからだ。丘の上にあがって見るまで、ゴブリンがどこをうろついているか判然としない。場合によっては、上った隣りに獣人がいる、ということもありうる。これを考えると、シーフや狩人などの、モンスターを察知する能力がかなり羨ましく思われる。 ここではもう一つ油断ならない敵がある。言わずとしれたトレマー・ラムだが、幸いなことに出くわさずにすんだ。もっともCliveはニアミスで、姿を隠している目の前を、地響きを立てながら大羊が通っていった、という。
一度セルビナに戻されたにもかかわらず、Cliveよりずっと早く私はバストゥークに着いた。 商業区の門から入った彼に偶然会った。彼は店を見て回って、後で休むという。クリスタルのご加護があれば、また会いましょう、と手を振って別れた。彼はこの国に長居はすまいが、自分はずっと住んで、バストゥークの長所も短所もすべて味わいつくすつもりである。
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