その218

キルトログ、コルシュシュ遠征軍に参加する

 三国は、所属する冒険者のモンスターとの戦績に従って、その地方――リージョンという――の支配権を得る。この協定をコンクエストと呼ぶ。各国は冒険者を使って、支配リージョンの多寡を競う「戦争」を行っているのだ。

 さて、支配権利はおよそ168日(注1)続き、新しい戦績に基づいて再集計されるのだが、地方によっては大勢が殆ど変わらないところがある。例えばロンフォールは、サンドリアのお膝元であって、他の冒険者が彼らより活躍するというようなことは、まず現実に起こり得ない。バストゥークのグスタベルグ、ウィンダスのサルタバルタも同様である。

 だが逆に、どこの所属の冒険者も戦績が芳しくないということはある。冒険者がそのリージョンでモンスターにやられ、戦闘不能に陥ると、彼の所属国の戦績ポイントががくりと落ちてしまう。三国が等しくこの状態にある場合、当該リージョンは獣人支配となる。禍々しい獣人の旗が風にひるがえり、吊るされたされこうべがからからと我々をあざ笑うのだ。アウトポストには火の気がなく、その地域の特産品は輸入されない。こうした物理的な障害も無視できないが、獣人支配が我々にもたらすのは、何より「世界を蹂躙されている」という屈辱感だ。これこそ冒険者の敗北、人類の敗北を意味するからである。

 通常こうした支配は一時的なものである。何故なら冒険者は世界中で戦い、通常は死ぬよりも生きて帰る機会の方が多いからだ。だが稀に、獣人支配が継続しているリージョンというのがある。モンスターが非常に手ごわく、死の危険が高い地域。あるいは、冒険者の狩場として人気がなく、戦闘そのものが少ない地域。私が歌碑をうつしに行った場所、ブブリム半島。ここはコルシュシュ地方というリージョンに所属しているのだが、不幸なことにずっと獣人支配が続いたままだ――ウィンダス領の港町マウラを岬に臨んでいるというのに!


 私とLeeshaは遠征軍に参加することにした。私の友達の、ウィンダス所属の人たちにも、広く参加を呼びかけたのだが、告知期間が短かったこともあって、集まりは芳しくなかった。ル・ルデの庭の噴水に、Senkuだけがやる気まんまんで来ていた。Leeshaと私は知らなかったのだが、遠征軍を安全に遂行させるためには、少なくとも9人以上、出来れば12人ほどのバランスがとれたメンバーが必要なのだそうだ。3人ではとても話にならない。

 さっきジュノ国内で、コルシュシュ遠征軍のメンバーを募っている者がいた、とLeeshaに聞いた。ただし、もう出立しているらしかった。我々は3人しかいないので、同じウィンダス国民であれば、協力することも出来るだろう。その人の名前をきいて連絡をとってみたらば、もうメンバーが18人いて、あなたたちを加える余地はないのだ、ということを言われた。

 私なりに遠征軍の情報を集めてみたのだが、途中から制度を少し変更した事実もあって、情報が錯綜しており、判らない部分も多い。我が知識がこんな状態では、とても飛び入りの助っ人は頼めない。私は友情に頼ることにした。ジュノにいるウィンダス国籍の友人に片っ端から声をかけた。こうしてWilliaとLandsendが加わり、SifやGreenmarsのように遅れて来る者もあり、少しづつ所帯が広がっていった。Greenmarsの友人で、むかし会ったこともあるタルタルのEmo(エモ)。Senkuの弟のPono(ポノ)もやっぱりタルタルで、ぼさぼさとした松ぼっくりのような頭がそっくりだった。もっともタルタルの外観にはどうしても慣れず、互いに似ているところばかりが目立つのだが。


 ウィンダス森の区から、意気揚々と出発した。募集予定から大幅に時間が経っていたが、何とか9人の大所帯にすることが出来た(注2)。メンバーも粒ぞろいだ。私が戦士でLeeshaが白魔道士。Sifはナイト。Williaは竜騎士で、子竜が肩口で羽ばたいていた。Senkuは黒魔道士、弟のPonoは吟遊詩人である。Landsendがシーフ。Greenmarsはモンク、友人のEmoは白魔道士。回復役が二人いるのは心強い。赤魔道士を含まないが、まあジョブは全体的にばらついていて、うまく均衡が取れているのではあるまいか。特にSifがいるのは大きい。獣人どもの集中砲火に耐えるのは、かたい装甲を誇るナイト以外にはまず務まらないだろうからだ。

 実際に参戦したことのある人間が殆どいないにもかかわらず、我々は既に勝ったような気分でいた。我々はうきうきした気分で、スローガンを声高に叫んだ。
「コルシュシュを連邦に奪還せよ!!」

 ところが、我々の思惑はそう簡単には運ばなかった。


 ガードと話すと、我々はブブリム半島へ飛ばされた。この地域で獣人旗を見つけ出し、そこに巣食っている獣人たちを叩くのだ。冒険者のように、職種の分かれたのが4匹出てくる、と聞く。戦闘は、一番厄介な敵から倒していくのが鉄則だ。怖いのは黒魔道士で、赤魔道士で、白魔道士で、吟遊詩人である。後衛の職種に攻撃を集中させよう、と相談ののち、我々はフィールドに散った。手分けして旗を探すつもりだった。

 北のはずれの崖の下で、それは見つかった。だが先客がいた。さっき話した一団らしかった。とんでもない多さで、ゴブリンどもを取り囲み、袋叩きにしている。なるほど、ゴブリンのシーフがいる。暗黒騎士も見える。我々は遠巻きに見つめながら、なるほど、こんなふうに職種が決まっているのだな、と確認した。やがて獣人は倒れ、旗が地面に引きずり下ろされると、彼らはまた離散するのだった。我々も旗を探しに四方へ散った。


獣人の旗

 しばらくすると、我々が戦える見込みが、非常に薄いことが判った。というのは、彼らが人数の多さを生かして、旗をいち早く見つけ、戦闘に入ってしまうからだった。彼らはウィンダスの遠征軍で、遠巻きに勲功を喜んでいてもいいのだが、こちらは意気満々で戦うつもりで出てきて、出撃出来ないというのでは、満足できるはずもなかった。一回でも戦って帰ろう、と誰かが行った。その通りだ。我々は南方に陣を張ることにした。今度そちらの方で旗が見つかったら、いちはやく我々が触るのだ。Sifはもうあまり長い時間はつきあえない、と言った。これは賭けだ。北方で旗が見つかったらすべて台無しである。その場合、我々はSifと別れて、強力な盾役を欠くことになる。残ったメンバーで獣人と戦えるかどうかは微妙だ。だから何としてでも、次で決めなくてはならないのだ。遠征軍に参加したからには、少しでも手柄を立てなければ。


「あった!!」と誰かが声を上げた。南の海岸で、獣人旗が見つかったのだ。我々はそれっと駆けていった。すでに彼らも発見していて、三々五々集まりつつあった。ところで、旗を最初に触るのはSif、という取り決めがあった。というのは、最初に旗を触ったものに、敵の攻撃が集中しやすい、という情報を入手していたからだ。ならば、装甲の固いナイトである彼が適任である。今回は早いもの勝ちなので、Sifが追いついてきてない場合は、やむを得ないが、私がタッチしようと思っていた。だが彼は私の隣にいて、しばし躊躇するように手を引っ込めたあと、思い切って旗のポールを握り締めた。たなびく獣人旗の下に、目つきのきついヤグードどもが4匹出現し、我々に襲い掛かってきた。

 確かに一匹を倒したことは覚えている。だが戦闘はそこまでだった。周囲にいた人たちが介入してきて、我々が集中して叩いている敵以外を、すべてぶちのめしてしまったからだ。何が何だか判らないうちに終わっていた、そんな感じだった。大局が読めず、ただ参戦しているだけの二等兵士になったような気がした。

 彼らが我々の獲物に手を出したのは、今まさにコンクエストの集計期限が迫っていたからである(その事情は後から知った)。我々の健闘もむなしく、戦績は確かに伸びたが、獣人の勢いにかろうじて届かなかった。奪還はならなかった。残念な結果だったが、無駄な犠牲者が出なかったのでよしとするべきだろうか。


 Landsendの友人に、銀髪のエルヴァーン氏がいた。Parsifal(パルジファル)という名前で、赤獅子騎士団という愛国党の一員である。当然サンドリア人だが、コルシュシュ陥落の手伝いに来ており、旗の位置を声高に叫んだりしていたものだった(ちなみにLibrossも同じLSメンバーである)。(注3)

 Parsifalが、赤獅子騎士団の団長殿と引き合わせてくれた。実際にお会いするのは始めてである。失礼ながら、一方的にエルヴァーンだとばかり思っていたが、髭をはやした精悍なヒュームの御仁だった。我々は健闘を誓い合ったが、最後ににやりと笑って、コルシュシュはウィンダスが頂きますよ、と付け加えるのを、私は忘れなかった。


赤獅子騎士団団長

解説

遠征軍について

 遠征軍とは、他国が支配しているリージョンに、冒険者のパーティを派遣し、戦績ポイントを増やす作戦を敢行する制度です。

 遠征軍はゲートハウスで参加することが出来ます。通常、パーティの人数や冒険者レベル、ミッションランクの高さなど、参加資格が要求されます(例えば、「4人以上、レベル20以上、ランク3以上」等。条件は遠征に出かけるリージョンによって変わります。遠く、モンスターの強い場所になるほど、条件は厳しくなります)。参加したい人は、パーティを組んだ状態で自国のガードに話しかけなくてはなりません。

 全員が同じリージョンを選択すると、遠征軍参加証が貰えます(実際には派遣先のリージョンに従って、「〜地方遠征軍参加証」という名前になります)。パーティは魔法によってその地方に飛ばされます。ガードは魔行符というものをくれますが、これは一瞬で本国(遠征軍参加を申し込んだ場所)に戻るためのアイテムです。必ずしも使ってしまわなくていいので、元の位置にワープしたいときのためにとっておいても構いません。

 遠征軍参加先で、冒険者が行うことは主に以下のふたつです。パーティが選択できます。

【1】(獲得戦績ポイント・大)
 獣人旗を探し出して、これに触り、出てきた獣人たちを倒す。これはリージョン内のオープンフィールド(屋根が無く、開けていて、チョコボが走れるエリア)にて行われる。
 例えば、コルシュシュ地方は、「マウラ」「ブブリム半島」「タロンギ大峡谷」「シャクラミの地下迷宮」「オンゾゾの迷路」の5エリアから構成されるが、獣人旗の出現するのは「ブブリム半島」である。「タロンギ大峡谷」もオープンフィールドだが、こちらでは行われない(各リージョンによって、獣人旗の出現するエリアは固定されている)。

 獣人旗とは、アウトポストに立っている旗のことではありません。遠征軍に参加している者があると、エリア内の何処かで、獣人旗(デザインは同じです)が見つかります。ブブリムだと出現場所は5箇所あって、そのうちの一箇所に「沸き」ます。この旗にパーティメンバーが触ると、複数の獣人が出現し、戦闘になります。戦闘に勝てば戦績が大幅にアップします(また、個人ポイントも報酬として増加します)。

 この戦闘はレベル制限がなされます(強い冒険者たちの一方的なクリアを避けるためです)。例えばブブリムでは、パーティのメンバーは、そのうちの一員が旗に触った段階で、一時的に30にまでレベルが下げられてしまいます(そのときのジョブレベルが29以下の場合はそのまま)。もし31以上でないと装備できない武器や防具を身につけていた場合は、予告なく脱げてしまいます。31レベル以上のジョブで参加する時は、必ずレベルキャップ以内の装備品をそろえておきましょう。

 
【2】(獲得戦績ポイント・小)
 当該リージョン内にあるダンジョン(地下迷宮などの閉鎖空間。ギデアスやゲルスバなど、狭い獣人本拠地も分類上これに含まれる。チョコボが走れないエリア)に侵入し、宝箱を出来るだけ開けて、敵の物資を奪う(宝箱は、オープンフィールドには出現しない)。

 もちろん、普通にシグネットをかけて、モンスターと戦っていても、戦績は加算されていくのですが、遠征軍は「そんなペースではとてもおっつかない場合」に利用するとよいでしょう。

 ただし、いろいろ模索中のシステムのようなので、今後のバージョンアップにおいて、仕様が変わってしまう可能性があります。

注1
 現実時間で1週間。ヴァナ・ディール時間は、1時間(現実)=1日で算出されます。

注2
 一つのパーティは6人が上限ですが、パーティを単位として残したまま、最高3つまで合体させることが出来ます(これをアラインアンスといいます)。

注3
 他国民は同じように遠征軍を申し込むわけにはいきませんが、協力することだけなら出来ます。現地でパーティの一員になればいいのです。ただし、リージョンの戦績は「最初に旗を触った者の国籍」に加算されますので、盾役のナイトだけは自国の人がいいでしょう。
 手伝いに来た他国民の人に、個人戦績ポイントは加算されません。純粋なボランティア扱いとなります。


(03.12.27)
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