その302

キルトログ、ギルド桟橋を見学する(1)

 新しく広がった世界の中でも、気軽に行けると評判だったギルド桟橋。ここに友だちと出かけることにした。同エリアはジャグナー森林の、東部から北部に向かって広がっており、サンドリアにも一部入り口が開いているという。

 エリア名が指す「ギルド」とは木工ギルドのことらしい。詳しい案内文を見つけることが出来なかったので、伝聞に頼るしかないが、サンドリアに木材を搬入するのに使われる航路を、冒険者に解放したという話だ。ウィンダスにビビキー湾があるならば、サンドリアにはギルド桟橋がある。観光地対決はどちらに軍配が上がるのか。ApricotとIllvest、それにLeeshaと一緒に、私はジャグナー森林中腹の、目的地に繋がる洞窟へやって来た。


 ギルド桟橋という名前であるにもかかわらず、入り口は洞窟である。きのこがべとべとした菌糸を伸ばし、通路を占領している。蜘蛛の巣が張り巡らされているかのようだ。本当に人が往来しているのだろうか。

 Illvestの先導で洞窟を抜けた。下草をかき分けていくと、不意に視界が開けた。木製の船着場が、二つのかがり火に照らされて、闇の中に浮かんでいた。我々はそこへ近づいていった。


筏(バージ)の到着場

 船着場は小さく、簡単なつくりであって、この点はビビキー湾と変わりがない。しかし、傍らに三角に積まれた丸木の山が、当地の所有するギルドを物語っている。藍色の水面は静けさを湛えている。時おり魚の跳ねる音が小さく響くくらいだ。私は船着場に歩み寄り、背高のっぽのギルド係員――エルヴァーンのアングーン・V・ファルウに話を聞いた。

 ギルド桟橋の水路は三種類あるらしい。主水路エメフィ支水路井守ヶ淵である。水路が木材の運搬経路であることは前述したが、現在使用されているのが主水路で、現在最も新しく、広いものだという。エメフィ支水路は文字通り支流である。左右に曲がりくねっていて、時には筏(バージ)と岸との距離が、わずか数イルムになる(注1)。三つの中では最古の水路だそうだ。珍しい魚もおり、「少しスリリングなコース」だと彼は言った。

 前述の二つに比べると、井守ヶ淵というのはちょっと異質である。イモリや蛙など、両生類が多く住むためこんな名がついたらしい。これらを生きた蝿を使って釣る。名をフロッグ・フィッシングという。井守ヶ淵は同スポーツの発祥の地ということだ。以上の三例から判るように――水に囲まれているのだから当然ともいえるが――ギルド桟橋は釣りの聖地である。あらかじめ竿の用意をしておいた方がよい、とLeeshaが言っていたが、その意味がやっとわかった。


 それで、船はいつ出るのかと係員に聞いた。何と数時間先だという。ギルド桟橋はなかなか船が来ないことで有名なのだ。私は次の便が井守ヶ淵周遊であることを確かめて、Apricotたちのところへ戻った。みんなは変な生き物を取り囲んで、人差し指でつっつきあっていた。一見、紫色のユリのようである。しかし、花びらの下に小さな翼があり、それをぱたぱたと動かして浮かんでいるのだ。葉がまるでひれのような働きをしている。花のようであるし、鳥のようであるし、魚のようでもある。バードトラップというのがモンスターの名前である。

 戯れにみんなで戦ってみた。あっさり打ち倒し、フライトラップの葉というのを手に入れた。これがジュノの競売で高く売れると聞いて、Apricotは喜んだが、残念ながらフライトラップの眷属が、葉を落とすことは非常に稀らしい。そのあと何度か戦っても、残念ながら数えるほどしか手に入れることが出来なかった。


フライトラップの眷属、バードトラップ

 やっとバージが入ってきた。魔行船と違い、帆のない、幅の広い筏である。どかどかと乗り込んで腰を落ち着けた。船の頭でランプを下げる、小柄な影をみてぎょっとした。トンベリではないか!近くによって凝視してみる。一言も喋ろうとしないが間違いなく獣人である。木工ギルドの説明によれば、別に不法な襲撃ではなくて、ちゃんと乗組員として搭乗しているということだった。褐色のマッディサイレドンが釣れたとき、これを渡したら、その場でイモリの黒焼きを作ってくれるという。秘伝のスパイスを用いた、美味で香り豊かな料理。何故かミスラたちに大変好評という話だ。

トンベリ

 バージが井守ヶ淵を走る頃は、真夜中であり、闇で景色が見えないかもしれないと危惧していたが、全くの杞憂であった。風光明媚を満喫したわけでは別にない。夜昼の問題以前に、ミルク色の濃い霧がかかり、どのみち周囲がちっとも見えやしなかったのだ!気のいい船頭が説明を続けてくれるのであるが、一同これにはすっかり白けてしまった。幸い水路はこれだけではない。せめてもう二つのどちらかに乗るときには、天気に恵まれてて欲しいと心より願うものである。

注1
 イルムは長さの単位。どのくらいに相当するのかわかりませんが、文脈から判るように、我々でいうところのセンチに近い規模と思われます。長い単位では、マルムというものも。


(04.10.31)
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