その316

キルトログ、闇の王の居城へ行く

 20年前、全世界を巻き込んだクリスタル戦争――獣人軍の首魁・闇の王は、人外境ザルカバードにある闇の城で指揮を取ったが、力及ばず、遂にバストゥークのフォルカーに討たれた。そう聞いている。

 しかしながら昨今では、獣人軍の動きが活発化している。その背景に、闇の王の復活がある、という噂が耐えない。ウィンダス政府の指令下で活動するなか、私も確かにその兆しを見た。ドラゴンと共に果てた闇の手先の証言。あるいは魔晶石の洞窟に現れた、巨大な黒い幻影。

 いま私は、Leeshaとともにズヴァール城に向かっている。脇を守るのは、赤魔道士のSteelbearと、モンクのLandsend。ヴァズ石から、雪原をまっすぐ西へ進む。城を取り囲む二重三重の堀が見える。崖下からは、オーロラのカーテンが吹き上がる。幻惑的な風景に目を細めながら、我々は氷の橋を渡り、ズヴァール城正門へ向かう。かがり火が点されている上に、まがまがしい歩哨の姿も耐えない。黒々とそびえ立つ門構えからも、廃城とはとても思えぬ雰囲気である。

ズヴァール城正門

 黒光りのする鉱石で出来た廊下が続く。私とLeeshaの二人は、姿と足音を消して進む。雪空の静寂のなか、魔物の巣窟の雰囲気に飲まれ、しわぶき一つするのにも息をころす。漆黒の身体をした、有翼の獣人が脇を通り過ぎる。デーモン族である。大戦前は闇の王の親衛隊として働いたときく。奴らがこの城を警護しているという事実が、王復活の時期が近いことを証明している。

デーモン

 やがて外郭は終わる。巨大な鉄の格子が行手を阻む。その両脇には、トーチカの炎がゆらゆらと燃えている。Landsendが、これこそ闇の炎であるという。門前にはモンクらしきガルカがおり、両脇をタルタルの二人組が守っている。どうやら彼らも何らかの用件で炎を必要としているらしい。ガルカが炎に触れると、ボムがさまよい出でて、たちまち死闘となった。あわれ彼は怪物の自爆に倒れた。しくしくと涙を流す助っ人二人が去ってから、私も慎重に、炎に向かって手を伸ばした。魔法がかかっているらしく、熱くは感じない。これなら松明やランタンに移さなくても、ジュノまで持ち帰れるかもしれない。

 現れたダーク・スパークを屠った。自爆攻撃がないのが幸いだった。我々はかんぬきを外し、さらに郭(くるわ)の奥へ向かう。この城の宝箱から、貴重な両脚の装備が手に入ると聞いたからである。

 
 屋根の下に入った我々は、さらに驚くべき光景を目撃した。ゴブリン、オーク、ヤグード、クゥダフの、強力な四大獣人が集い、それぞれが北東、南東、南西、北西を守っている。各エリアの中心には大きな円状の穴が空いており、地下二階までの吹き抜けとなっている。人間の城郭でいう「隅塔」に相当するのだが、地の底へ向かうというのがいかにも魔物の居城らしい。

クゥダフの守る北西の穴。
手前はLandsend

 宝箱は、これらの穴から飛び降りた地下一階の広間で見つかる。何も知らなかった私は、一番下、すなわち地下二階まで落っこちてしまった。これがいけなかった。姿を消すプリズムパウダーも、足音をころすサイレントオイルも、すぐに手持ちが底をついた。ヤグードの群れに追いかけられたとき、Steelbearが助けに来たが、多勢に無勢、さすがの彼も深手を負った。もうこれまでかと覚悟したところ、LandsendとLeeshaが到着した。Landsendは暴れ回り、小さな身体に似合わぬ、強力な拳と蹴りで敵を葬った。獅子奮迅の活躍とは、けだし彼のような働きを言うのだろう。


 結局宝箱は見つからず、私は出直すことに決めた。残ったのは、廃城の宝のカギと、獣人に追いかけられた恐ろしい記憶のみであった。

 ジュノ港市場を訪ね、件の木箱に炎をかざした。闇の炎が妖しくゆれて、すうと箱に吸い込まれていった。坊主頭の男が立っていた。「契約は為された!」闇が破れた。呆然と立ち尽くす私。傍らの石床には、紅色をした、見事な篭手が転がっているのだった。


 ファイターマフラを身につけて、<不朽の盾>に出かけた。ガスラムがすげえすげえと言った。
「本当だったんだな、ボルグヘイツの魔手……」
 じっくりと検分して、
「それにしても、誰に直してもらったんだい?」
「魔物に魂を売った男さ」


 幽霊話は以上である。もし古い小手を見つけたら、市場前に行ってみるがいい。文字通り「名匠の魂」に触れることができるだろう。

(05.01.23)
Copyright (C) 2004 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送