その334

キルトログ、刀鍛冶の依頼を聞く(1)

 扉が閉まった。再び、我々3人が残された。
「参ったな」
 ギルガメッシュが頬をかく。
「アルドめ。最初っから聞いてやがったんだ」
「見張りは何をしてたのかしら」
「まあ、いいがな。彼が協力してくれるのはありがてえ。大公兄弟が古代人だなんて話、誰に話したところで、素直に受け入れてもらえるとは思えん」
 だが、アルドは信じた。彼は亡霊を受け入れた。ギルガメッシュの前に現れた老人の存在を。そしておそらく、妹の失踪に絡んでいるはずの、“古代の亡霊”たちについても。
 部屋を出ようとした私に、ギルガメッシュが声をかけた。
「準備が出来たら、カザムにいる、ミスラの族長に会うがいい」
 私は唸った。ジャコ・ワーコンダロに?
「知ってるなら、話は早え。俺から彼女に話をしておく。どのくらいかはわからないが、多少の手助けをしてくれることだろう。
 それじゃ、また会おう、旦那。できたら鍛錬に、あまり時間がかからなければいいがね」


 ギルガメッシュの部屋を出た。廊下は暗かった。見張り役のヒュームが、ばつが悪そうに頭を下げる。扉の前は小広くなっていて、傍らに木箱が積まれていた。その前で髭をしごきながら、ううん、ううんと唸っているエルヴァーンがいる。私は彼の肩をたたき、何をそんなに思い悩んでいるのか、尋ねてみた。

 エルヴァーンはジョクリベと名乗った。私は彼と握手をした。
「ギルガメッシュ殿から、鍛刀を頼まれているのだ」 
 彼は刀鍛冶だという。
「おぬしたち冒険者は、クリスタルを使った合成術を連想するかもしれないが、ここノーグでは、昔ながらの製法で刀を作っている。急いで取りかからねばならぬものの、材料が不足してしまっているのだ。これではよい品を作ることはできない」
 材料とは何だろうか。
「おいそれと手に入るものではない。このノーグにすら、満足に流れては来ないのだから……」
 いいから。
「……そうか。それでは、おぬしにお願いするとしよう。
 ボムの卸し鉄と、聖地の木の枝が足りない。卸し鉄は、炉内の鉄を溶かすのに必要だし、木の枝は炉の火種となる。
 材料に関しては、うちにいる若い衆に管理をさせている。どうやったら調達できるのかは、彼らに聞いたらわかるだろう。
 おぬしが無事に取ってきてくれることを、祈るばかりだ」

 ジョクリベともう一度握手して、私は長い廊下を歩き、ノーグの表階段を下りていった。

刀鍛冶ジョクリベ

 アエカという若い女が語る。
「ジョクリベ殿に依頼されてきたのか。それでは、卸し鉄について教えてやろう。
 冒険者よ、こいつを知っているか」
 アエカは、拳大の黒い石のようなものを取り出した。私はそれを手にとり、まじまじと観察したが、私にはどうしても、ねじくれた鉄片以外のものには見えなかった。
「そいつは、東方の古鉄だ。くず鉄だと思うだろう。当たりだよ。それ自身には大した価値がない。しかし一方で、大変に貴重なものでもある。
 というのは、東方の鉄は、ヴァナ・ディールのそれと違い、さまざまな材質を含んでいるからだ。これをうまく変質させることで、炉内の鉄を溶かすのに最適な材料となる。ひいてはそれが、良質の刀へと繋がる。
 やり方は簡単だ。ボムに食わせるのだよ。モンスターの体内で、鉄が変質する……そいつを取り出す。うまいことに、古鉄はボムの大好物でね」

 取り出す過程においては、退治しなくてはならないのだろう。私がそう言うと、アエカはにやりと笑った。
「バストゥーク近くのコンシュタット高地に、小さな洞窟があって、中にボムが潜んでいる。私たちはいつもそこを使っている」
 そんなに遠くまで?
「理由はいろいろある。洞窟だから人目につきにくいしな。もっとも一番の理由は、そいつが良質の鉄を吐き出すからだが。
 洞窟の地面が炭化していて、黒くなっている部分がある。そこに古鉄を置くがいい。ボムがおびき寄せられてくる。奴が鉄を食ったら、すかさず退治して鉄を持ち帰れ。ボムの卸し鉄はそれで手に入る。何か質問は?」
 聖地の木の枝に関しては?
「私の担当じゃない。ランマウドに尋ねるといい」


 ランマウドは語る。
「刀はおのが魂をうつすものである。魂の修練も必要なのである。ゆめ忘るることなかれ。
 そういう講釈はいい? そうか。
 聖地の木の枝の話であったな。鍛刀は、刀鍛冶が魂を刀に込める神聖な儀式……まあ聞け。そういう神聖な儀式であるからして、火にくべる薪もまた、聖地より手に入れなくてはならない。おわかりか。
 ミンダルシア大陸の北東に、聖地ジ・タがあるであろう。そこに、樹齢数千年を数えるという霊木がある。この神木の新芽を、霊木の枝に継ぐがいい。神聖なる力が芽に満たされて、望む木の枝が手に入るであろう。
 あー。言うまでもないことだが、新芽は貴重な品であるからして、なくさんように大事に持っていけ。それと。
 神木には守護者がついておる……。いたずらをしようとする者には、力の制裁が待っていよう。それがしの言う意味がわかるな。わかったら、準備と覚悟をしていくがいい。気をつけてな」

 私はチョコボを借り出し、カザムへと急ぐ。飛空挺でジュノに戻れば、仲間の協力を期待することも出来るだろう。


(05.04.03)
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