その389

キルトログ、デルクフの塔に到着する

 我々がデルクフの塔に到着する頃には、既に真夜中となっていた。塔の周囲に人影はなく、万年雪に照らされた闇の向こう側から、かすかな潮騒の音が聞こえてくる。6人が塔前に集合した――私、Leesha、Steelbear、Ragnarok、Urizane、Landsend。

 意を決して塔に踏み入ったら、話し声が聞こえた。私は反射的に岩陰に身を隠し、仲間にも同様にするように身振りをした。聞きなれた声である、とすぐにわかったが、改めて出て行く気にはなれなかった。今日の昼、別行動をとる、ということをすでに宣言していたからである。

虹の祈りがないと、中に入るのは無理よ」
 人影は2つあった。ライオンがアルドに話をしている。彼らが歩く先にザイドが立っていた。両腕を組み、無愛想な様子でつっ立っている。

 ライオンが、彼に向かってにこやかに手を振った。
「ハロー、ザイド。一緒に行きましょう」

「助力など、頼んだ覚えはないが」
 彼はぶっすりと言った。ライオンがけらけらと声をあげて笑った。
「固いことを言わないの! 虹の祈りを持っているんでしょう。こないだ、Kiltrogと流砂洞へ行ったってことは調べずみなんだから。あなたがいないと、兄弟のところへはたどり着けないの。悪いけど、嫌と言ったってついていくから」
「じゃあ勝手にするがいい」
「ザイド、こちらが天晶堂のアルドよ」
 ライオンが一歩横にずれて、連れを紹介した。
「アルド、こっちのザイドは、ガルカの暗黒戦士。バストゥークにこの人ありと恐れられた、暗黒剣の使い手よ」
「くだらんことを言うな」
 ザイドはぴしゃりと言った。
「あんたがアルドか。天晶堂については聞いている。なかなか大きな組織のようだな」
「俺の足手まといには、ならないでほしいね」
 アルドがぬけぬけと言った。
「俺は、片手剣の技術はちょっとしたもんだからな」
「慢心してると火傷することになるぞ、ちっぽけなヒュームめ」
「おふたりさん、喧嘩だけはやめてよ。さあ握手!」
 
 ライオンがザイドの、分厚い、グローブのような右手を取り、アルドの右手と組ませた。彼らは気持ち程度に手を上下させると、腫れ物を触るようにぱっと握手をほどいた。

「じきKiltrogが、彼の仲間を連れて来ると思うわ。私たちは3人しかいないから、せいぜい仲良くやらなきゃ。そうでしょう?」
「いいけど、大公を斬るのは俺だぜ」
「アルドとやら、それは俺の台詞だ。お前たちは怪我をしないように、後ろに下がっているがいい」
「もう……先が思いやられるわね」


 ライオンら3人が消えてから、我々は通路に戻り、彼らの後を追いかけた。

 デルクフの塔へは、何度も鍛錬に来たことがある。そのため、いくらか勝手はわかっていたが、最奥地へ向かう抜け道は知らなかった。デルクフのカギを使って、扉をくぐり、隠れ通路を抜けていくと、徐々に強めのモンスターが現れ出した。我々は姿と足音を消さねばならなかった。こういうときははなればなれになりがちだが、Landsendがカーバンクルを呼び出し、先導させたので、迷うことなく一緒にいることが出来た。カーバンクルのぴかぴかの身体は、色味のない塔内で格好の目印になったのである。

 ふよふよと空中を漂う巨大な壷。生き血の好きなコウモリの群れ。紫色の肌をいた獰猛な巨人。奴らの脇をすり抜けて、奥へ進んだ。果てしない階段を下りていって、同じくらいまた上がった。テレポートのポイントに飛び込み、一気に10階へ到達した。目的地まではすぐそこだ。


 さて、ここまでの道中で、一度もライオンたちの姿を見ることがなかった。彼らに先を越されてしまうのだろうか? そう思うと、口惜しさが募った。奴らは我々の手で倒したい。我々6人の力を合わせれば、必ずやカムラナートを倒し、ジラートの野望を阻止することが出来るはずなのだが……。



(05.08.21)
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