その145

キルトログ、魂の故郷へと向かう

 サンドリアのレストランで開かれた、Pivoの騒がしい宴会のことを覚えておられるだろうか。私は出席の約束をバストゥークでした。手記では触れなかったが、私とPivoは、さりげなくもう一つの約束を交わしていた。ガルカの故郷に行くことがあったら、ぜひ一緒に参りましょうと。はるか前、まさかコロロカの洞門が開くなどとは、夢にも思われなかった頃の話である。

 私がその洞門を覗き、ジェリーに追われて逃げ帰った話は、どうも読者氏のあいだに、少なからぬ反響を呼び起こしてしまったようだが、上記のような経緯があったものだから、洞門を本気で突破しようという気持ちは薄かった。ゼプウェル島は旅人生の最終目的地の一つであったので、私にとっては、何となく先延ばしにしたい気持ちが強かったせいもある。

 だが状況は予断を許さなかった。コロロカの洞門という場所は、ちょうどいま私くらいのレベルの者たちの狩場となっていて、私もパーティを組んだとき、成り行きによっては連れて行かれる恐れがあった。そうすると約束は守れなくなるし、感動に浸る余韻も得られないだろう。そういうわけで、楽しみを後にとっておきたいのは山々だが、味気なく新天地にたどり着いてしまう前に、気心の知れた仲間たちと旅をしておこうと考えたのだ。以上が今回の、ガルカの里探訪ツアーの経緯である。


 天晶堂を訪れた翌日未明、私は騎上の人となり、バストゥーク目がけて出発した。

 今回の参加者は、私を入れて9人となる予定だった。レベル上げが目的ではないから、強さはどのくらいでも良かったのだが、あんまり実力差があり過ぎても、おんぶに抱っことなって味気ないし、緊張感を欠くので、私のレベル――28から離れすぎない程度の、26〜30レベル前後のジョブで合わせてくれるよう頼んでおいた。

 グスタベルグを駆けて行く私に、続々と仲間たちの声が届いた。私はバストゥーク商業区の噴水に集まってくれるように頼んだ。人数が6人を越えるので必然的にアライアンスを組む必要があったが、ジョブに偏りがあって、白魔道士が足りないのが悩みの種だった。これは飛び入りで参加してくれたLeeshaによって解決された。今回のツアーの参加者は、全部で8人となった。メンバーは以下の通りである。

 私。

 Leesha。回復担当の白魔道士。ゼプウェル島にはもう渡っている。

 Libross。回復役。同じくコロロカ突破済。

 Ragnarok。シーフ27レベルで参加。意外にもゼプウェル未踏。

 Pivo。獣使いを訓練し、26レベルになりたてで参加した。

 ApricotとElice(エリス)。EliceはApricotの実の姉で、27レベルシーフのタルタルである。Apricotが黒魔道士(30レベル)で、とんがり帽子を被っていなかったら、二人ともそっくりな風貌――おさげの髪型まで同じ――なので、外見だけで見分けをつけることは殆ど不可能だったろう。

 そして、Sif(シフ)その142ですれ違った人物である。かねてからの知り合いだが旅をするのは初めてである。彼は26レベルの詩人で参加した。そして、彼も以前コロロカを突破したことがあった。

 8人のうち、5人が未踏の地へ向かうのだった。我々はツェールン鉱山に移動した。出発しようとして、ホームポイントを触っていないことに気づき、万一のためにバストゥーク鉱山区のクリスタルに触れて戻った。これで道中に不幸があっても、皆ひとしくここへ戻って来ることが出来る。

 洞門の衛兵に通して貰う前に、私は簡単な口上を述べた。

 メンバーそれぞれとの関係を紹介したあと、私は今回の旅が、まず私的な色合いの濃いものであることを説明した。何となれば、ガルカであって、ゼプウェル島を目指すことに特別な感慨を持つのは、この中でただ私ひとりだけだったから。しかも旅の企画自体が、私とPivoとの個人的約束に端を発しているのだ(ここでPivoが軽く一礼し、感謝の言葉をつけ加えた)。

 ご承知のように、私は単身ではコロロカを突破できなかった。ぶよぶよした原始的な生き物に対してすら、文字通り尻尾を巻いて逃げ帰ったわけだから。私が故郷へ向かうには、皆の助けがどうしても必要であり、そのために今日こうして集まって頂いた。既にゼプウェルの地を踏んだ3人も、それ以外の4人も、願わくばこの旅を楽しみ、よい思い出となってくれることを祈る。それが未熟な私に出来る最大限のお礼である。

 こうべを下げると、皆が暖かい拍手を私に贈ってくれた。我々はメンバーを編成した。私をリーダーとした5人と、Librossをリーダーとした3人の2つのパーティに分かれる。私のチームには、EliceとApricotの姉妹、回復役のLeeshaと、それを歌で補佐するSifが入った。PivoとRagnarokはLibrossのチームである。こうして2パーティによるアライアンスが決定した。

 我々は意気揚々と格子を潜った。今度こそ本当に、ガルカの故郷への旅が始まったのだ。

 
(03.06.29)
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