その195

キルトログ、クロウラーの巣の中を駆け回る
クロウラーの巣(Crawler's Nest)
 ロランベリーを食い荒らす害虫クロウラーの住む洞窟。
 内部には、クロウラーの吐いた粘糸で、奇妙な巣が形作られている。
 冒険者には、クロウラー駆除が奨励され、賞金も与えられているが、何故かジュノ軍による本格的な殲滅作戦が行われたことは、かつて一度もない。
 これは、実は、彼らの一種が吐く絹糸が高級織物の材料として最近注目されており、ロランベリー以上に、ジュノに莫大な富をもたらしているからではないか、と実しやかに噂されている。
(ヴァナ・ディール観光ガイドより)
 両手斧の訓練は順調に進んでいる。タロンギのダルメルが敵として物足りなくなってから、私は「練習相手」を求めて、シャクラミの地下迷宮に潜り、次いでマウラ周辺で、少し手ごわいゴブリンや、ブル・ダルメル相手に斧を振るった。時間はかかるが、その成果は出ている。少なくとも連携技として重宝する「シュトルムヴィント」という技を覚えるまでは、断続的にでも続けねばなるまい。

 マウラに常駐しているような物好きに声をかける者は少ない。32レベルの仕官口が付近にないからである。まれにはるばるジュノから声をかけてくる人もいる。いた。よくよく声を聞いたなら、前回のリーダー、タルタルのWanderboyなのであった。こないだも彼は遥か遠くから求人してきた。私がそれを指摘すると、彼は覚えててくれましたかと言って喜んだ。何故に忘れようか、何しろ昨日と今日の話なのだ。

 前回と同様、デムの岩まで迎えに来て貰った。前回と同様、5人のメンバーは既に決まっていて、後は私が合流するだけなのだった。当然目的地はとうに決定していた。私はてっきり、また飛空挺に乗って、カザム近郊へ行くのだろうとばかり思っていたが、彼らはチョコボ厩舎の方へ歩いていく。クロウラーの巣へ向かうというのである。さて名前だけは聞いたことがあった。急いで調べたら、ロランベリー耕地に隣接するダンジョンで、果物を狙う芋虫どもの温床らしい。チョコボで畑を踏み越え、西へ西へと向かうと、確かに高台に洞窟が開いているのだった。我々はチョコボを降りて隊列を組み、いざと力んで中へと踏み込んだ。
 

クロウラーの巣・入り口

 得体のしれない昆虫の巣に入っていくのほど不気味なことはない。薄暗い洞窟の中は、あくまで岩の壁であるのに、不自然な緑色に染まり、ぬとぬととした粘液の感触が、触らずとも手のひらに伝わってくるようであった。天井まで伸びた巻きひげが、さながら小さな林のようで、私はぞっとしたのだが、仲間たちは意にも介さず隙間を駆け抜けていく。どうやらこの場所へ初めて来たのは私だけらしい。勇気を奮い起こして後を追ったのだが、それからも私の目に映るのは、鉤爪のように曲がったつるから滴る水滴や、クロウラーの吐き出したらしい繭が、呼吸するように蠢いている姿で、すっかり食欲が減退してしまった。とっておきのミスラ風山の幸串焼きも、砂を噛んでいるとしか思えないほど味気なく感じられるのだった。


 エルヴァーンのSergei(セルゲイ)(シーフ32、戦士16レベル)が、ヒュームのSakamichi(サカミチ)(侍32、戦士16レベル)を伴って、獲物を探しに行ってしまった。ヒュームのKite(カイト)(赤魔道士32、黒16レベル)は座っている。Wonderboyがまた煙草をふかしている。私は巣の地図を持っていないので、迷子になるから下手に出歩けないなあというと、この付近は基本的に一本道だから、とんでもなく遠出をしなければ大丈夫だよと、煙草タルタルの隣にいたヒュームのMorfin(モーフィン)(白魔道士32、黒16レベル)が言った。そういう経緯で、せっかくだから私も前衛二人の後を追うことにした。


巻きひげの間を走り抜ける

 一方に駆けていくと、時に折り返してくるSergeiやSakamitiとすれ違う。ということは、先の通路に獲物は見つからなかったのだ。そうして我々はしばらくばたばたと駆け回った。結果判明したのは、クロウラーが全然近くにいないという事実だった。一体どういうことだ、と仲間たちは首を捻った。どうやら、恐ろしくレベルの高いガルカの暗黒騎士が――ザイドではなさそうだが――いて、自分の武器を訓練するのに、クロウラーを相手にしているらしいということが、だんだん判ってきた。念願の芋虫は彼に独り占めされているのだ。あんまりだ、と仲間たちから不満の声が挙がった(同じようなことをマウラでしていた私は黙っていた)。

 Wonderboyが意を決して、さすがリーダーというべきだが、直接彼に談判してみると言った。しかし、少しは獲物を残してくれないか、というささやかな嘆願は、一方的に無視されてしまったようだ。Wonderboyは、リーダーとして力がいたらず申し訳ない、と頭を下げた。だがそれを誰が責めよう。出かけた狩場で何が起こりうるか、予想することはほとんど不可能だ。だから我々はWonderboyを取り囲んで、めいめい彼を慰めたのだが、何しろ彼がタルタルなものだから、さながらみんなですねた子供をあやしているみたいになった。元気を取り戻した我々は、改めて獲物を探した。チャンスはゼロではない。暗黒騎士の隙をついて、先にクロウラーを見つけだし、何とか唾をつけるのだ。

 やがて念願の獲物が、徐々に見つかるようになった。さらに暗黒騎士が去ると、策敵はなお楽になった。先刻のように、必ずしも広範囲を走り回る必要はなかった――というのは、ワーカー・クロウラーは、単体がとても強力で、一戦終わるたびに休憩をとらなくてはならなかったから、準備が再び整う頃には、すぐ近くにまた、新しい獲物が見つかるのが常だったのだ。

 それにしても、ワーカー・クロウラーは恐ろしい敵だった。見かけも大きさも普通のクロウラーと変わりない。だがその攻撃は強烈である。私は自分の頑丈さと、鎧の堅固さを合わせて、守備力にちょっとした自信を持っていたのだが、その私が幾度となく瀕死の状態になった。私の自惚れは文字通り無残に打ち砕かれてしまった。

 前線に立つのは、私とSakamichiとSergeiなのだが、侍がひとり入っているので変則的な連携になった。私とSakamichi、SergeiとSakamichiの、二連携の組み合わせである(注1)。私はこれをよく理解しておらず、戦闘中にちょっとした恥をかくことになった。

 こちらの準備がまだ整っていないのに、連携の合図がして、「レッドロータス!」とSergeiが叫び、私を急かすのだ。私は面食らってしまった。それが2、3回と続いて、少し頭にきた私は、Sergeiが声を上げても放っておくことにした。これがとんでもない間違いだった。私とSergeiのいずれも、侍のSakamichiが放つ壱之太刀・飛燕に合わせて、片手剣の必殺技レッドロータスを続けることになっていた。連携が2種類あるわけだから、連携開始の合図も2種類ある。私が聞いていた合図は、SakamichiがSergeiに出したもので、Sergeiは単に技を出すとき、かけ声を上げていたに過ぎない。私に話しかけていたわけではなかったのだ。恥ずかしい思いをした。

クロウラーにブーメランで狙いをつけるSergei

 クロウラー狩りは順調にいき、私は33レベルとなった。鼻歌を歌いながらジュノへと戻った。おそらくこの後もたびたび訪れるだろう。効率のいい鍛錬は歓迎するが、それにしても巣の内部が、もう少し穏やかであってくれてもいいのに、と私は、鳥肌をさすりながら思うのだった。


注1
 物理攻撃を命中させたり、あるいは受けたりすると、TPという数値が貯まっていきます。これは300で頭打ちになりますが、100を越えた時点で、ウェポンスキルという必殺技を放つことが出来ます(その5解説参照)。
 侍は10レベルを越えると、TPの蓄積スピードがアップします(この効果は30レベルでさらに上がります)。侍のSakamichiが、Kiltrog、Sergeiと、それぞれ連携を組めるのは、二人より早くTPが貯められるからです。
 ウェポンスキルを一度放つと、TPは必ずゼロに戻ってしまいますが(100を超過したぶんのTPは、ダメージの上乗せ等に反映されます)、侍には明鏡止水というジョブアビリティがあって、これを使った場合、一度に使うTPを100に限定することが出来ます。これをうまく使うと、一人で連携を決めることが出来ます。例えばTPが300で満タンになっている場合、100+100+100で、侍は3連続でウェポンスキルを放つことが出来るのです。


(03.11.14)
Copyright (C) 2003 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送