その224 キルトログ、騎士最終試験を受ける(1) 久方ぶりに、騎士試験官バラシエルのもとを訪れた。騎士見習いの資格を貰って以来である(その207参照)。私の実力から、最終試験はいつでも受けられたのだが、非常に面倒なものだと聞いていたので、今日の今日まで先延ばしにしていたのである。 「貴殿にこの書を渡そう」 こころなしか、バラシエルの口調も重々しい。 「あとは己で考えるがよい。迷っている暇はないぞ!」 私は課題の書を開いた。わけのわからない詩のようなものが書きつけてある……。
何のこっちゃ、と頭を悩ませていると、Leeshaはにっこりと笑って、こっちですよと私をいざなう。展望塔が南サンドリアの門を挟んで東西に立っている。彼女は西塔の階段を上り、街を見下ろしていた衛兵を指差す。朝方の霞にくもるサンドリアは、何だか物悲しく、都会育ちではない私の胸にも、郷愁を感じさせてやまない。衛兵は私の手にあるものをみとめて、新しい書を一通よこした。どうやら試験官バラシエルに、あらかじめ命令されているようである。
この西の書と対になるのが東の書である。同じ要領で東塔の上の衛兵がくれた。課題の書に書かれてある「東」と「西」が、何を指しているのかは明らかである。つまり私は、まず東の書の判じ物を解き、次いで西の書の謎を研究しなくてはならないらしい。
東塔の通路の上に、神学者の男がひとり立っており、巻物を見ながら思案していた。話しかけてくる。えい、私はそれどころではないというのに。 「ウィンダスの、不埒な天体学者を論破しに行くんだ」 そういって天体図を広げてみせる。天文学が進んでいるウィンダスでは、星座という概念が作られた。星には特有の配置がある。明るい恒星同士を線で結び合わせて、形に見合った名称をつけたものが星座である。ラムウ座、リヴァイアサン座、モーグリ座、トンベリ座(!)。神学者が「不埒」だと憤るのは、これらがウィンダスの民話伝承をもとに名づけられたからである。例えば、以下がそうだ。 「南西の大魔道士、ラムウの手から放たれた雷が、山火事を起こし、そこから人の使う火――ボムが生まれた。怒った神々は、西の海からリヴァイアサンを呼んで消しとめ、人間は一度滅びた……」 なるほどこういう宗教観を、サンドリア人が受け入れられなくて当然だろう(現に彼は「邪悪な神話」だと罵っているのだ)。私は天体図を見た。通常の地図と異なり、東西が左右逆になっている。南西にラムウ座が見える。その西に大きくリヴァイアサン座がすわり、その下、南南西に、小さなボム座が鎮座している。ボムは火の玉のかたちをした怪物で、自爆をして破片を周囲に撒き散らす。星座こそこんなに可愛らしいが、実際に戦ったときには実に厄介な敵なのだ。 ボム座……。ボム。 自らを粉々にして、人に危害を与える者……。
サンドリアのチョコボ厩舎へ出かけた。SteelbearとLeeshaが準備をととのえ、私が出発するのをじっと待っている。 「東を知りて西を知るべし」。東の書は特定の地域を指しており、西の書はその地域の中で、何処に向かえばよいかを示しているものと思われる。東の書が表しているのは、ダボイにまず間違いない。ダボイはジャグナー森林の南に位置する。森林の北部には巨大な湖があって、Leeshaが船で渡ってみたいと言った島が浮かぶ。川の流れはダボイに向かって注いでいる。「澱んだ者たち」が何を指しているのかは明らかだ。ダボイは修道院のあった村だが、現在は一般的に、オークの巣窟として認知されているからである。 ダボイの襲撃は10数年前に遡る。ということは、この課題の書は近年に記されたものに違いない。伝統的な騎士ではなく、あくまで冒険者を対象にした試験なのだろう。何とかダボイを奪還したいという、試験者の焦燥が感じられるようだ。 「参りましょう」 我々はチョコボに跨り、南門を出た。数あるジョブの試験の中で、ナイトのものが一番危険だという。私はいよいよその最終試練に臨むのだ。 (04.01.23)
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