その239

キルトログ、炎の魔法陣で戦う

 ジュノ港のチョコボ厩舎降り口、屋根のついた階段の陰に、ヒュームの商人がひっそりと立っている。針金のようにぴんぴんと立った熊髭、たるんだ下腹。外見で人は判断すべきではないが、まっとうな商売人なら、まずこういう日の当たらない場所にはおるまい。

「こいつは、モンスターが閉じ込められている、という宝珠さ」

 男は小袋から、きらきらと輝くオーブを取り出してみせる。
 
獣人印章と交換してやるぜ。へへへ」

 獣人印章とは、粘土板に押し付けて使う獣人の判で、奴らの関所を通るときに手形として使われる。貨幣ほどとはいわないが、数が実に多いようで、蜂やマンドラゴラなどの、知性に乏しいモンスターから入手できることもある。

 溜まりに溜まった獣人印章は43を数えていた。そのうちの40個をスターオーブと交換してもらう。商人がいやらしい笑みを浮かべる。さぞかし悪質な商法なのだろうが、こちらは言い値に従うしかない。宝珠を手にしてモグハウスへ帰り、ウィンダスへ帰る支度をする。これからStridemoonとともに、炎の魔法陣の中で戦うのだ。


 炎の魔法陣(Burning Circle)での戦いは、その頭文字を取って、俗にBC戦と呼ばれる。オーブを魔法陣に投げ込むことで、閉じ込められていたモンスターと戦闘が出来る。報酬は豪華である。悪い魔法効果をひとつ打ち消すことが出来る白魔法イレースや、忍者の空蝉の術・弐の巻物などの、魔法・術をはじめ、体力と回避力がアップするサバイバルベルト、高性能の盾バランスバックラーなど。とりわけこの二つは、戦士である私には重宝しそうだ。

 Stridemoonの誘いを直前になって話したことで、Leeshaとひと悶着あったのだが、最終的には仲良く集合場所へ出かけた。水の区調理ギルド前の広場には、思ったよりもたくさんの人間が集まっている。その数10人。StridemoonやEliceの友人たちで、Apricotの姿も見える。当然ながらというか、やはりタルタルの人数が多い。

 BCの中ではレベル40に制限されるから、相応の装備を用意しなくてはいけない。41レベルの私には大して難しくなかった。その他の必需品には、以下の二つがある。

毒薬(たくさん)
ハイポーション(やはりたくさん)

 前衛と後衛では用意するものも違う。魔力を回復させるヤグードドリンクや、エーテルは言うに及ばない。全員食事はミスラ風海の幸串焼きをとって、防御力の増加に努める。こういうぬかりない準備をしても、必ず勝てるとは限らない。ことほど左様に、魔法陣下ではぎりぎりの戦いを強いられる。

 そういう戦闘に、なぜ毒薬が必要なのか? 私は首を捻りながら、一向に混ざって、ギデアスの炎の魔法陣へ向かうのであった。


魔法陣前

 炎の魔法陣は三箇所にあることが確認されている。ギデアス、パルブロ鉱山、ゲルスバ砦(ユグホトの岩屋)である。私はパルブロで竜と戦ったことがあるし、飛空挺パス交換用の鍵を取りに来たとき、ギデアスの魔法陣も覗いてみたことがある(その155参照)。

 前回も冒険者が多数詰めかけていたが、今度は特に多いようだ。皆BC戦に押しかけてきたものと見える。報酬の宝物にはさまざまな種類があり、3つの魔法陣で共通しているのもあれば、そこでしか得られないものもある。魔法陣により敵は違っていて、ここにはドモヴォイドボロヴォイという、マンドラゴラのモンスターが7匹登場するそうだ。

 順番待ちをしている間に作戦を聞いた。敵の中では、黒魔道士の力を持つドボロヴォイが最も恐ろしい。まずは前衛が集中してこれを叩く。残りの6匹はみんな白魔道士のドモヴォイである。吟遊詩人の歌によって一斉に眠らせ、各個撃破に入るが、歌の効力が届かなかった個体には、盾役が挑発をして引き付ける。

 毒薬は睡眠防止に使う。マンドラゴラは夢想花という範囲攻撃をしてくることがあり、これをまともに食らうと眠ってしまうのである。一般に睡眠は、敵から攻撃を貰ったり、味方がケアルをかけたりして、体力に増減があった場合に解消される。これに毒薬を使おうというのである。戦闘前に服用し、効力が切れたらまた飲む。毒薬は少しずつ体力を減らしていくので、たとえ眠ってしまっても、すぐに目を覚ますことが出来るというわけだ。

 以上だけ聞いていると、何だか簡単そうに思えるかもしれない。しかし魔法陣の中からは、断末魔の叫び声が次々に漏れてくるのだ。死体が吐き出されると、白魔道士が駆け寄って回復を試みている。私はこうした騒ぎを人事のように見ていたと思う。しかし我々の番になって、とりあえず経験者だけでやってみましょうと、Stridemoonたち第一陣が飛び込み――あれよあれよという間に全滅するさまを目の当たりにして、私は血の気が引くのを覚えたのだった(注1)

 その頃には、企画を聞きつけた吟遊詩人のSifが、現場に到着していた。彼も第二陣に加わり、私と一緒に魔法陣へ飛び込むのだ。BC戦を既に経験している彼は、最初のうちは夢中で、何も出来ませんよと言う。せいぜい足を引っ張らないようにしなければと思いながら、私はオーブを高々と掲げた。

 我々は魔法陣に吸い込まれた。

バトルフィールドへの道のり

 目の前にまっすぐ下りていく道がある。黒色の岩が、さながら溶岩がはねて、そのまま冷えて固まったとでもいうように、めいめい天に向かって突きあがっている。その棘々の林を抜けていくと、マグマ色の鈍い輝きを放つ、巨大な魔法陣に出た。中央に鎮座する宝箱の周囲には、おなじみのマンドラゴラたちが7体、ぱたぱたと双葉を動かしている。我々は毒をあおり、武器を構えて突撃する。天上の何処かから、Stridemoonら、残された仲間たちの声援が聞こえる。ここは魔の領域、モンスターと戦うために存在する異空間なのだ。

宝箱を開く

 なるほど、最初は何も出来ないというのは嘘ではなかった。マンドラゴラは7体もいる。前衛は必ずターゲットを合わせなければならない。そうしている限り決して困難な敵ではないが、一つ挑発を仕掛けるなり、一斉に襲い掛かってくる7体を前にして、冷静さを保つには、それなりの訓練と経験が必要である。Sifの歌は奴らを一斉に眠らせる。足止めが効いているうちに我々が各個撃破に入る。目印が特にあるわけではないから、共通の一匹を攻撃するのは意外に難しい。標的を間違えて「寝た子」を起こしてはならない。そういう気遣いをしながら、目を覚ました個体にも注意を怠らず、適時挑発を入れる。これは口でいうほど簡単なことではない。それでいてミスは即座に全滅に直結するのだ。

 まず一人がやられると、バランスが一気に崩れて、立て直すことは難しくなる。集団戦というのは常にそうで、これは相手にも言えることだ。マンドラゴラの数が減ってくると、敵からのダメージは確実に減り、気持ちに余裕が出て、パニックの効果も弱まる。こちらに死人がおらず、敵を4匹にまで減らせたら、戦闘は8割方制したも同然といえよう。

 最後のドモヴォイを切り捨て、追討を終えると、我々は宝箱のまわりに集合した。オーブの持ち主である私が蓋を開くと、中からは6種類の宝物が出てきて、元の世界に戻された。中にイレースの巻物があった。皆この魔法を求めていたのだが、Leeshaのものになった。私か彼女のオーブでイレースが出た場合、Leeshaに渡すという取り決めをしていたのだ。

 私はそののち、一戦にだけ参加して退席した。後に聞いたところ、Leeshaはさらに戦っていたが、早々に死人が出て、何とか持ち直したにも関わらず、時間切れで魔法陣を追い出されたのだという(解説参照)


注1
 第一陣の6人とアライアンスを組んでいると、彼らの体力ゲージが表示されますので、戦闘そのものは見られずとも、虐殺されている様子がよくわかります(…)。

解説

BC戦について


 BC戦は一種のボーナス戦闘で、レベル制限、時間制限(30分)のもと、ハードな戦いを強いられます。戦利品が競売所に出品されていることはあるものの、多くは高価なので、結局多くの人が(少なくとも一回は)体験することになるでしょう。

 BC戦のためにはオーブが必要です。全てのオーブは、ジュノ港のShamiに獣人印章をトレードすることで入手できます。オーブにより必要な印章の数が違いますが、この数はそのままレベル制限の数値となっています(40個で手に入るスターオーブは、レベル40制限です)。

コメットオーブ:獣人印章50個と交換(レベル50制限のBC)
ムーンオーブ:獣人印章60個と交換(レベル60制限のBC)

 
また、獣人印章の上位アイテムとして、獣神印章というものもあります。こちらはレベル50以上の任意の敵がまれに落としますが、BC戦でレベル制限を貰うことはないようです。上級プレイヤー向きと言えるでしょう。

クローソーオーブ
:獣神印章30個と交換
ラキシスオーブ:同
アトロポスオーブ: 同

 BCのある場所は、ギデアス、パルブロ鉱山、ゲルスバ砦ですが、流砂洞、海蛇の岩窟、ウガレピ寺院も追加されたようです。登場する敵はオーブと場所によって異なります。得られる宝も、共通しているものもあれば、場所によって限定されているものもあります。詳しくは攻略サイトをご覧下さい。

(04.04.03) 
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