その365

キルトログ、三つの紋章を入手する(2)

 三つの紋章のうち、ダボイのものは手に入れた。これからオズトロヤ城と、ベドーの2箇所を回らねばならぬ。どちらを先に攻略するかは、ちょっとした議題の種になった。というのは、両者はそれぞれ、固有の問題点を抱えていたからである。

 オズトロヤ城には、こざかしい仕掛けが満載だ。落とし穴つきの扉、毎日変わる暗号(その312参照)。一方、ベドーはそれほど面倒でない。だがしかし、金剛王ザ・ダと側近たちに出くわしたときはどうだろう。奴らには隠伏の魔法が効かぬ。オークやヤグードのように、索敵を視力に頼るタイプの獣人は、背面を通り過ぎればやり過ごせるだろう。一方、嗅覚型のクゥダフはそうはいかない。奴らに接近してしまったら、決して逃れることはできない――そういう意味でベドーは、オズトロヤ並みか、下手をすればそれ以上に攻略困難な場所ともいえるのだ。

 私たちは悩み、答えを出せずにいた。そこでアドバイスを貰うことにした。熟練の冒険者である、禿頭(とくとう)のガルカRuellに相談した。彼は、嗚呼じゃあ一緒に行こう、と言ってくれる。散歩にでも出かけるような口調なので、そんなに軽い調子で大丈夫かと聞いたが、危険だという事実には違いないし、たとえどっちが先になろうと、結局2箇所とも攻略せねばならぬ。そういう意味で私たちに足りないのは、要するにふん切りであった。冒険者生活のうちには、開き直りに似た覚悟が必要なときもある。


 ヤグード・パラサイトの皮を取りに来た際、オズトロヤ城内の泉までは到達していた。今回はそれより、さらに奥へ行くことになる。それこそ現人神、ヅェー・シシュに肉薄する位置まで。ヤグード教の頂点に立つ奴の姿を、この目で見ることは出来るだろうか?



 4つのレバーに匹敵するくらいの、奇妙な仕掛けを見つけた。
 Ruellは私たちを、小さな部屋へと導いた。床の一部が固い板になっており、その前に例の、魚の骨のようなオブジェクトがある。板の部分がいかにもあやしく、私は警戒心を募らせたが、Ruellは躊躇することなく上に乗った。彼の体重を支えても、板はぎしとも言わぬ。落とし穴と思っていたが違うようである。
 Ruellは手を伸ばし、鼻歌なんぞ歌いながら、オブジェクトに触れた。表面をいじっているようであった。何をしているのか聞こうとすると、突然板がぱっかりと口を開け、彼の姿が忽然と消えた。落とし穴に飲み込まれてしまったのである。
 私はアッと言い、「Ruell! Ruell!」と名前を呼んだ。ほっとしたことに、下の方から「心配ない」という声がした。彼の説明によれば、これは罠ではないという。それどころかれっきとした進路である。正確にパスワードを入力すると、床の板が開く。ここを通ることなしには、ヅェー・シシュのところには進めないのだ。実に手の込んだ仕掛けだ。獣人のやることながら、私はその厳戒ぶりに舌を巻いた(注1)

 ふと気づいたらLeeshaの姿がない。下から声がする。彼女も仕掛けの意味を知っていたようだ。そんなわけで私も板に乗ったが、パスワードが皆目わからない。やむを得ずRuellに教えてもらう。さて何だったかなあと、彼は頼りない調子だったが、何とか正解を打ち込むことが出来た。ばたんと板が開いて、私は地下に落ち、無事に2人と合流した。
 薄暗い通路が続いており、先から光が漏れている。そちらの道を辿っていったら、大きな広場に出た。どうやらオズトロヤの中央にある、中庭の一部のようだ。この祭壇の間のどこかに、現人神ヅェー・シシュがいるらしい。

 私たちはインビジをかけて進む。ヤグードの高僧と頻繁にすれ違うが、いつ魔法を見破られるかと思うと、生きた心地がしない。ヅェー・シシュが見られるかもしれないとひそかに期待したものの、終わりは呆気なかった。突然にRuellが立ち止まり、道端を指差す。ヤグードの紋章が落ちている。

 私が望むなら、現人神に会うことは可能だったろうが、任務を優先した。私たちは紋章を拾い上げて、さっさと魔法で城を出た。さあ、2番目の紋章を手に入れた。さっさと終わらせましょうとRuellが言うので、私たちはその足で、最後の場所――クゥダフの本拠地ベドーへと急ぐことにする。



 1時間後、私たちはクゥルンの大伽藍に立っている。ベドーは湿度も気温も高く、足を踏み入れるだけで憂鬱な土地だが、洞窟の中は思ったよりも過ごしやすい。王が好んで住みたがるわけである。

 霧のかかる洞窟の中を、わくわくもし、どきどきもしながら進むのは、ダボイでも経験したことだ。霧に邪魔をされて、悪名高きクゥダフ王どころか、奴が座っているだろう玉座の位置も確認できない。ダボイの状況がシンクロし始めた。

 ボスとの接点を欠いたまま、任務終了となるのではないか。その予感は的中した。洞窟の隅に、紋章が投げやりに放り出してある。これを拾って、マートに届けたら完了だ。脱出には魔法をかければいい。エスケプを唱えて貰ったら、パシュハウ沼に一瞬で逃げることが出来る。
 私たちは迷わずそうした――結局、大将バックゴテック大将も、現人神ヅェー・シシュも、金剛王ザ・ダも、一目すら見ることは出来なかった。

 現在私は、64レベルとなっている。冒険者の最高到達レベルは、現時点で75だという。私がその強さに上りつめる過程で、ボスたちと戦う機会はあるのだろうか。そのときが楽しみなようでもあるし、少し怖いようでもある。

注1
 第1〜第3の言葉を正確に入力しなくてはいけません。合言葉は、そこに到るまでの途中の部屋に断片的に示されていますが、全部で12パターン程度と組み合わせが決まっており、それぞれを日替わりで(おそらくはランダムに)使いまわしているようです。


(05.06.05)
Copyright (C) 2002-2005 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送