バストゥーク史(1)――【鉄腕】マイヤー

■ポイント■
・ゴールドラッシュでグスタベルグの人口増加
・【鉄腕】マイヤー、自由労働者遊撃隊を結成
・建国宣言――マイヤー、初代大統領へ

 ウィンダスやサンドリアから、時に伝統の浅さを指摘されることがあるが、それでもバストゥーク共和国は、建国以来400年近くの歴史を誇る。必要なら、紀元前3000年の古代グスタベルグ文明に言及するのも可能だし(注1)、600年前のゼプウェル島、ガルカとアンティカの戦いまで遡ってもよい。

◆【鉄腕】マイヤーと労働者遊撃隊

 とはいえやはり、ゴールドラッシュから語るのが無難だろう。418年、グスゲン山で金脈が発見され、地元のザルクヘイム、荒れ野のグスタベルグに大量の労働者が流入し始めた。彼らは大半がヒュームであって、大陸南部に定住していたガルカがそれに混ざっていた。中にはヴァナ・ディール外周から参加する者もあった。後にバストゥーク初代大統領となる、【鉄腕】マイヤーもその一人である。

 マイヤーの生年はよくわかっていないが、近東の出身で、少年時代ゴールドラッシュの噂を聞きつけ、密航してクォン大陸へたどり着いた(注2)。屈強な身体の青年に成長し、現地で妻をもらい、鉱山でよく働いた。【鉄腕】という二つ名はこれに由来しているが、この時点ではまだ彼は一介の労働者に過ぎない。ターニング・ポイントとなったのは、463年の王立騎士団の襲来である。ゴールドラッシュは拡大の一途を辿り、456年には、サンドリアにまで労働者が流れ込んでいた。これは神殿騎士隊によって追放されるが、事態を重く見た王国側は、治安悪化の“元凶”を叩くため、本格的な討伐隊を労働者集落まで差し向けたのである。

 サンドリアの討伐は成功した。集落は焼かれ、多数の労働者とその家族が死んだ。中にはマイヤーの愛妻も含まれていた。この悲劇を受けて彼は、ガルカの友人ダルハとともに、自由労働者遊撃隊を組織、本格的な自衛作戦に乗り出した。469年、労働者の安全確保のため、バストゥーク渓谷に砦を構築することを計画し、本格的に着手した。後の共和国の名前は、この砦があった地名に由来している。

◆バストゥーク渓谷の勝利

 とはいえ、そのような計画をサンドリアが許すはずもない。屈強とはいえ、素人の一団に過ぎないマイヤーたちは、騎士団の急襲におびえながら仕事を続けねばならなかった。そして487年、砦の完成を見ないまま、王立騎士団の再来襲を迎えたのである。

 このときのサンドリアの人数は明らかではないが、300〜500人程度の規模だったと思われる。マイヤーは陣頭指揮を取った。バストゥーク渓谷は天然の要害だったものの、砦が完成していない以上、まともに戦うのは難しい。彼は策を弄する必要があった。

 マイヤーは囮の一団を使うことにした。戦っては逃げ、戦っては逃げさせて、騎士団を巧みに誘導させた。勢いを駆って迫り来るチョコボの騎士たち。彼らは遂に、両脇が切り立った崖となっている、渓谷の深部に差しかかった。ここは袋小路となっており、大きな滝が――臥竜の滝のことか――爆音を立てて流れ落ちていた。

 騎士団が引き返そうとしたとき、巨大な落石が彼らの退路を塞いだ。マイヤーの合図で、崖上から伏兵が姿を現した。雨あられと射かけられる石弓の一斉射撃! サンドリアの被害は甚大で、騎士隊の半分が死傷、百名以上が捕虜になるという大敗北だった。一方労働者側の被害は、死傷者47名に留まった。史上まれに見る大勝利のひとつである。

 臥竜の滝。高台である北グスタベルグの西側の崖から、南グスタベルグ側へ流れ落ちている。

◆建国宣言

 この勝利がもたらした影響は大きい。畏怖の対象であったサンドリア騎士団を撃退したことで、彼らの中に大きな自信が芽生えた。マイヤーの名声とともに、いやが上にも気運はたかまり、結束は固まっていった。491年の砦の落成がそれに拍車をかけた。サンドリアには盗賊団と蔑称されていた彼らも、コミュニティを次の段階に進ませるべきだ、という認識が芽生えたに違いない。

 そして、遂にそのときがやって来た。

 ヒュームとガルカから成る労働者たちは、皆バストゥークの広場に集まり、丘の上にひるがえる「自由」と「勝利」と「団結」の旗を見つめていた。やがて歓呼の声があがり、既に伝説となりつつあった【鉄腕】マイヤーが姿を見せた。彼はゆっくり丘にのぼると、だしぬけに三本の旗を抜き取り、地面に放り捨てたのである。あっけにとられる大衆に向かって、彼は割れ鐘のような大声をあげた。

「労働者諸君ッ! 自由にしてェなら、国はいらねェ。勝つぐれえなら、逃げちまった方が楽だ。団結っても目的はみんなばっらばら。だろ? だけどなァ、ちょっと堅っくるしくして、敵にも勝たなきゃいけなくて、無理して団結しなきゃならないが、俺たち全員ここで生きていくにゃあ、そろそろ国が必要だよな!?」 
(原文ママ)

 人々は熱狂し、この共和国建国宣言に賛同した。興奮の叫び声が渓谷にこだまし、谷全体をゆるがした。このとき【鉄腕】マイヤーの隣に、彼の友人であるダルハ――堂々たる体躯を持ったガルカの戦士――が登場し、マイヤーにも負けぬ大声で人々を一喝、たちどころに彼らを黙らせた。

 ダルハは拳を振り上げて怒鳴った。

「マイヤーを大統領に!」

「マイヤーを大統領に!」「マイヤーを大統領に!」満場の労働者たちは、歓声をあげて彼に続いた。めいめいがダルハ同様に拳を突き上げ、承認の意志を示した。こうしてマイヤーは、バストゥーク共和国を建国、初代にして終身大統領に就任した。時に494年のことである。


注1
 紀元前3000年頃、ダングルフの谷にヒューム族の村が存在したことが明らかになっている(
古代グスタベルグ文明)。古代ジラート文明との関係は不明。

注2
 第一回の王立騎士団襲撃のとき、マイヤーが20代であったとすると、マイヤーは433〜443年ごろの生まれとなり、建国時50代、死亡時60代となる。


(06.09.24)
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