ウィンダス史(1)――魔法の時代と連邦の誕生
■ポイント■
・巨星ゴルディオスの襲来――天晶歴元年
・ウィンダス入植と魔法の獲得
・立国の賢者トゥクク、連邦を発足

 ウィンダス連邦は、394年に成立している。古代ジラートや古代グスタベルグ文明などを除けば、最も伝統ある国家といえる。サンドリアの建国は90年後なのだ! 連邦500年の歴史を追ってみよう。

◆有史以前

 現在、ヴァナ・ディール全土で使用されている暦は、ウィンダスのタルタル族が作り出したものである。星の神子シャンリリと天文学者が作業に当たった。シャンリリは天文泉を覗いて、ヴァナ・ディールに巨星ゴルディオスが飛来した年を調べた。ゴルディオスは昼なお輝く超新星であり、1年もの間、夜が消えるという現象が起こった。当時のヴァナ・ディール人たちは、女神が降臨した、と囁きあったものだ。神託と天文学者の研究から、それが334年前であることが判明、元年とされた。天晶歴はその正確性が認められ、414年サンドリアに、658年バストゥークにも採用され、万国共通の暦となった。

 天晶歴に従うこと200年ごろ、クォン大陸に住んでいたタルタル族が、ミンダルシア大陸に入植を開始した。エルヴァーンが氏族に分かれてクォンに散ったのが、ちょうどこの頃である。直接エルヴァーンに追い出されたのかどうかはわからないが、少なくとも無関係ではあるまい。タルタルは身体が小さかったので、争いを嫌っていたのだ。彼らはブブリム半島から上陸、安住の地を求めてさ迷った――西へ、西へ。

 コルシュシュ地方は起伏が激しく、おまけに乾燥していた。転落死する者が続出、慢性的な水不足に悩まされた。このまま進むべきかどうか? 族長たちによって会議が行われ――旅は続行された。コルシュシュとはタルタル語で「決断の地」を意味する。彼らはやがて、タロンギ大峡谷の南に、緑の広がるステップの大地を見出した。彼らはここを「約束の地」サルタバルタと名づけ、本格的な入植を始めた。幸い、古代の遺跡が発見され、ここを利用して集落を築くことが出来た。その名をウィンダスという(注1)。217年のことである。 

◆魔法の獲得

 219年――入植開始からわずか2年――世界を根底から揺るがす大事件が起こった。ひとりの少女の行動が、かくも後世に重大な影響を与えようとは。

 タルタルの一少女に過ぎなかったリミララは、ウィンダス周辺に点在する遺跡に足をのばした。彼女にとっては、単なる冒険に過ぎなかったはずだ。しかし、リミララは突如そこで天啓を得た(注2)。直感的な力。強大な力。彼女には物理属性を超越する、何か不思議な能力が備わった。魔法の獲得である。

 魔法は、タルタルにとって重要な意味を持っていた。これを使えば、身体の大きい他種族たちや、恐ろしい獣人たちと、互角以上に渡り合うことが出来るからだ! ただしリミララは――自分の意志で封印したのか、伝える手段をもたなかったのかはわからないが――魔法を他人に広めず、個人的な能力にとどめ置いた。魔法が民間に伝播するのは、星の神子タビロロの代まで待たないといけない。彼女は289年、諸部族の族長を呼び集め、魔法を伝授したのである。

 水の区魔法店のエンササ屋によると、古代の魔法の使い方は、触媒を使用するものだったが、現在では大気中に満ちる元素を利用するのが主である。
 しかしながら、リミララが最初から触媒を使ったとは考えにくい。
 彼女が獲得したのは、より現在のかたちに近い魔法であったと考えられる。

◆魔法の時代

 220年、リミララはサルタバルタで暴れていた獣の鎮圧に乗り出した。彼女は満月の泉に獣を発見、これを鎮めた。大いなる獣は凶暴で、人々が軒並み門を閉ざさねばならぬほどだったが、彼女の働きでようやく平穏に暮らせるようになったという。

 時代は下って289年、族長たちを通じて、タルタル族のほとんどに魔法の能力が行き渡った。ところが、最悪のことが起こった。各部族が、手に入れた新しい力を使って、互いに権力抗争を始めたのである。タビロロはその翌年に入滅するのだが、星の神子継承の儀式にすらも、族長たちはひとりも姿を現さない始末だった。わずか1年で、それほど事態は深刻化したのである。

 タビロロの後を継いだのは、トゥククであった。トゥククはわずか3歳にして、無意識に黒魔法を唱え、自宅を全焼させてしまったが、これを知ったタビロロが彼女を引き取った。長じて書記官見習となり、タビロロ入滅の際に後継者に指名された。彼女はまず、神殿内にはびこっていた神官の部族派閥解体に努めた。軽視されるようになった神子の神性を取り戻し、自らの権限を強めたのである。

 そして294年、彼女は大胆な行動に出た。そのときタルタル族は、東西に分かれて会戦を行っていた。彼女は戦場に赴くと、突如強烈な魔光を放ち、一瞬で戦いを中断させたのである。そして両軍の代表者を呼びつけ、休戦協定のテーブルにつかせた。彼女はその席で、数日後に神殿で宴を行うことを告げた。

 宴! 豪華な食べ物、飲み物につられて、犬猿の仲の族長たちが集まってきた。彼らは三日三晩浮かれ騒いだ。トゥククは面白い話で彼らを夢中にさせた。そして宴たけなわのころ、部族間のしがらみを解き、ひとつの国にまとまらないかと持ち出した。さすがに即断は叶わなかった。一同は喧々諤々(けんけんがくがく)と論議を続けたが、豪華な宴の効果もあってか、最後には満場一致で賛成され、ここにウィンダス連邦が発足した。

 宴の際で議員も決められ、元老院が創設された。トゥククはその後も、刑法や魔法の整備、通貨の制定に走り回ったが、不治の病にかかり、皆に惜しまれつつ入滅したという。

 このときのムム貨幣は貝製で、現在確認される最古の通貨である。タルタル古銭というものがあるが、同一品とは考えにくい(注4)。目の院の職員は「古い貨幣にはもう価値がない」と述べる。素材が貝であり、骨董品としての価値も薄いことを言っているのだろう。

注1
 現時点で、ウィンダスという言葉がどこから来たのかは明らかでない。コルシュシュやサルタバルタの例を見る限り、タルタル語に属するものとは思いがたいのだが。

注2
 ヴァナ・ディールの歴史の概要を見ると、魔法の獲得は、「(入植の)旅の終わりから数十年が過ぎたある日のこと」とあるが、ウィンダス正史ではわずか2年後に過ぎない。


注3
 「星の神子」という名称は、彼女が魔法を獲得した年に与えられた。タビロロからトゥククへは継承の儀式が行われているので、すでに3世紀後半には制度が成立していたようだ。


注4
 目の院のロプノノは、タルタル古銭のことを「ウィンダスの初代の神子さまの時代に作られた、古い古いコイン」と語る。星座が刻まれていたらしい。貝に加工したとも考えられるが、いくつか現存するため、やはり「タルタル古銭=金属製」であり、通常のムム貨幣とは違うと考えられる。


(06.02.15)
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