その157

キルトログ、再びリーダーになる

 私は再びタロンギ大峡谷に出てきて、蜂などを相手に鍛錬していた。相変わらず同レベル帯の冒険者は少ない。さて、どうしてくれよう? 海を渡ってバルクルムに移動するのもよいし、そうした方が賢明なのは明らかだが、私の頭には、獣人に支配されたコルシュシュ地方の惨状――とりわけ、旗からぶら下がっていたあの人骨――がひっかかっていた。結局私は船には乗らなかった。半分意地になっていたのだろう。

 パーティを編成するのにはまず白魔道士を確保しなければならない。よほどせっかちな人物を除いて、回復役の定まっていないパーティに入るのは躊躇するものだし、常識がないと疑われても仕方がない。この点、私は幸運だった。友人の白魔道士がウィンダスにいたのだ。私は知らなかったが、このたび有志によって「ボンオドリ」というダンス・パーティがウィンダスで開催され、彼はそれを見学に来ていたのである(その38参照)。この友人とは、三国巡りの折り、グスタベルグの臥竜の滝の前で出会った人物である(その126参照)。そういうわけで私は、今ここにようやく、ヒュームのIllvest(イルベスト)(白15、黒魔道士7レベル)を皆さんに紹介できるというわけである。

 欲を言えばもう一人白魔道士が欲しいところだった。仲間を集める人間は、当然どこで狩りをするのかを明確にすることを求められるが、私は正直最後まで迷っていた。私のレベルは随分と上がってしまったので、シャクラミの地下迷宮では、もはや実りが少ないかもしれない。そういう場合にはブブリム半島に出撃し、ブル・ダルメルやカッター(蟹)を標的にするべきだが、メイズ・メイカーならいざ知らず、これらの強敵相手では、白魔道士ひとりでは追いつかない可能性があった。

 だがもとより人がいないのだから仕方がない。私は東サルタバルタからタルタルのCuttan(カッタン)(黒15、白魔道士7レベル)をスカウトした。ついでやはりタルタルのUltimater(ウルティメイター)(シーフ14、戦士7レベル)。彼には前衛に入って貰うつもりだったが、シーフとモンク(私)では防御力に不安が残るので、ウィンダスにいたエルヴァーンのKaala(カーラ)(ナイト14、戦士7レベル)に、無理を言って来て貰うことにした。珍しい話だが、こういうときに限って、手ごろな強さの戦士が周囲に一人もいなかったのだ。

 ウィンダスからはるばる駆けて来るKaalaと、ヒュームのChrom(クロム)(黒15、白魔道士7レベル)が合流するまで、我々はブブリム半島との境目近くで待っていた。ここに集合するのは、ブブリム半島に入ってホームポイント設定を合わせておくためだが、この一帯が獣人支配に入っていることを私はすっかり忘れていた(注1)。Ultimaterはいかにも陽気なタルタルらしい人物で、楽しいおしゃべりで場を和ませた。目の前をイモムシの大群が通ったときの彼の喜びようったら! 一人の冒険者が大量のクロウラーに襲われながら、半島の方へ逃げていくのだ――そういう場面を見て喜ぶというのは少々不謹慎ではあるが、珍しい光景なのは確かだし、ずんぐりしたクロウラーの集団がもこもこと身体をくねらせながら高速で走っていく様子は、やはりどこかユーモラスで笑いを誘うのだった。


 シャクラミの地下迷宮へ我々は移動した。狩りの手ごたえが薄いときにはブブリム半島へ移動する、とあらかじめ伝えてあったが、その必要はなかった。得られた経験は満足のいくものだった。もっともかつて味わったほど目覚しい成果ではなかったが。

 Ultimaterには気がかりなことが一つあった。彼は格闘の使い手だったが、前衛の中では一人だけ14レベルだった。私とKaaraとはそれより1レベル上だし、もともと前線で身体を張る本職だから、攻撃力が高い。Ultimaterはシーフでしかもタルタルである。この事実から導ける回答は? 彼の攻撃があまり命中しないのだ。まだしも片手剣の方がレベルが高いというので、Kaalaが剣を貸してやったりしたのだが、結局攻撃が空を切る頻度はあまり変わらないようで、彼は終始得物と「格闘」しなければならなかった。

 前回の不幸な結末を含めて、シャクラミには連続で訪れているわけだが、二つほど変化があった。まずはライバルのパーティがいたことだった。彼らはどうも下の層で狩りをしているようなので、私たちは入り口からすぐの広場の方に陣取っていた。何回か下りていってはみたが、お互いのテリトリーを荒らしたくはなかったので、そのまま戻ってきた。その時に私は第二の発見をした。例の曲がり角の繭にグールがいたのである。ということは、モンスターは持ち場を変えたのではなく、何らかの原因で不在だったわけだ――それがどんな理由によるのかは結局わからないわけだが。

 魔道士にはときどき面白い独自の文句を唱える人がいる。私はそういう人物を少なくとも一人知っているわけだが、そうだとしたらChromは二人目だ。魔法をかけるときに「目があ、目があ!」と叫んでいたのは彼である。これはどうもブライン――敵の視力を一時的に奪って、攻撃の命中率を下げる魔法――を唱えるときにそう口走っているらしい。しかし見えなくなるのは相手であってChromではない。逆だろう、ともしかしたら突っ込まれるのを待っていたかもしれないのだが、面白いからそのままにしておいた。彼は他にも独創的な呪文を口にしていた。その全部を紹介できないのが残念でならない。


Kaalaが弓を引き絞る

 狩りは満足のいくもので、殆どのメンバーがレベルアップを果たした。私も16レベルになったが、さすがにこの強さになってみれば、集団でメイズ・メイカーを狩るのが苦しくなった。クォン大陸に渡るのであれ、こちらに留まるのであれ、今度からは別の狩場を考えた方がよいだろう。
 
 私たちはタロンギに戻って解散した。Kaalaがもうしばらく鍛錬すると言い出した。彼女は我々の中でレベルアップを果たさなかった数少ない一人だった。手の空いている者がしばらく彼女を手伝うことになり、私もIllvestと一緒にブブリム半島へと乗り出した。

 ブブリム半島で私たちは、ウサギやゴブリンを相手に戦ったのだが、メイズ・メイカーが随分と組し易い敵だ、という認識が新たになるばかりだった。前回の鍛錬で私は、ブブリムは危なくて仕方がないという冗談を言った。これは私が考えるよりずっと真実を衝いていたようである。むろんシャクラミにも相応の危険が伴うわけだが、少なくとも効率がずっと良いことは確かで、それは私が短期間に6レベルを上げたことで十分証明されると思う。


タルタル花火

 私たちはマウラへ落ち着いて解散した。ボンオドリの名残りか、街の入り口にはタルタルたちが5人並んでいて、花火を楽しんでいた。彼らがめいめいに飛び跳ねたりする様子を見て、Kaalaはその可愛さに感激し、タルタルちゃんタルタルちゃんと手を振ったりしていたのだが、何というかそういう光景を見ると、彼らとガルカとの立場の違いが改めて思い出され、ため息の出るのを覚えるのであった。

注1
 皆が同じ場所でホームポイント設定をしておくと、敵にやられて戦闘不能になった場合に、等しく最寄りの場所へ戻ってくることが出来ます。獣人支配になると、ホームポイントを設定してくれるガードがいなくなってしまうので、上記の場所に集まるのも無駄というわけです。


(030811)
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